日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
耳鼻咽喉科・頭頸部外科の将来展望
―今求められる新たな耳鼻咽喉科領域の医療技術開発とその実用化―
讃岐 徹治
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2016 年 119 巻 11 号 p. 1359-1365

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抄録

 新規医療機器開発「内転型痙攣性発声障害に対するチタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型の効果に関する研究」を紹介するとともに, 医師主導治験を用いた高度管理医療機器開発と保険診療に向けた戦略の課題と将来の展望について述べる.
 痙攣性発声障害は, 喉頭に器質的異常や運動麻痺を認めない機能性発声障害の一つで, 発声時に内喉頭筋の不随意的, 断続的な痙攣による発声障害を来す疾患であり, 国内外ともに内転型痙攣性発声障害に対する根本的な治療はない. チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型は, 発声時に内喉頭筋が不随意的, 断続的に強く内転することで声門が過閉鎖し症状が発現することに着目し, 発声時に声門が強く内転しても声帯が強く閉まらないように甲状軟骨を正中に切開し, 両側甲状披裂筋の付着部を甲状軟骨ごと外側に広げて固定する手術術式であり, 一色らにより報告された.
 チタンブリッジは, 内転型痙攣性発声障害に対する根治治療として世界に先駆けて開発された新規原理の医療機器 (日本・米国で特許取得済) で, 本邦独自の医療技術である. チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型による治療は, その有効性により患者の QOL 向上に寄与し, 標準治療になり得るものと考え, 2014年より難治性疾患等克服研究事業でチタンブリッジの実用化 (薬事承認申請) に向けた研究を開始した.
 医師主導治験の対象となる疾患は, 稀少疾患や難治性疾患がほとんどである. 開発を進めるためには潜在患者数や診断基準が重要となるが, アンケート調査や医療機関の診断基準の報告が存在する程度であり開発に支障があることが多い. また開発が終了し薬事承認されても, 新規医薬品・医療機器を使用した新規技術が保険収載されない限り, 技術料の算定や新規医療機器も保険材料として算定できないため, 学会と開発当初から連携し, 保険収載手続きの準備が必要である.

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© 2016 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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