日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
舌下免疫療法の Up to date
湯田 厚司
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2016 年 119 巻 11 号 p. 1373-1378

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抄録

 スギ花粉とダニの舌下免疫治療薬が発売され, 本邦の2大アレルゲンへの治療が開始された. 舌下免疫は軽症から重症・最重症まで適応となるので適応外の把握が重要である. 筆者らは, 複数薬剤で改善が少ない例, 副作用がある例, 薬剤を減らしたい例が良い適応と考える. 特に若い女性と12~16歳の学生には勧めている. スギ花粉とダニの重複感作も多いが, 2つのアレルゲンの同時投与は推奨されていない. 昨年, 初めてチモシーとブタクサの同時舌下投与が米国で安全に行われたので, 今後本邦でも安全性が証明されればと願っている. スギ花粉とダニは治療スケジュールが異なる. 特に維持量が違い, スギ花粉 2,000JAU に対して, ダニ2製剤は 10,000JAU と 57,000JAU である. アレルゲン量が異なると効果や安全性も違う可能性が高い. 該当製剤の臨床試験での副作用出現率はスギ花粉では13.5%であったが, ダニの2製剤では63.6%と68.3%と高かった. 高アレルゲンのダニの副反応はスギ花粉よりも頻度と症状が強いので注意が要るだろう.
 われわれは2年間で359例のスギ花粉舌下免疫療法を行ったので, 実績を紹介する. ドロップアウトは少なく, 2年で約7%であった. アドヒアランスは約10%で悪かったが, 1年目に89%, 2年目に81%を保った. 1年目の207例での副反応出現率は40.6%で, 臨床試験報告の13.5%より多かった. 口腔内感覚症状と花粉症症状が最も多く, 局所腫脹は7.9%に認めたが, すべてが処置不要の軽微なものであった. 副反応は開始後1カ月に集中した. 各種評価法での2015年 (中等度飛散年) の効果は, 初期療法や飛散後治療の薬物療法よりも有意に効果的であった. 寛解例は初年度に16.8%であった.
 現在の保険適用年齢は12歳以上であるが, 小児への適用も目指した開発がされている.

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