日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
耳症状を主訴に受診した ANCA 関連血管炎20例の臨床像
―全身型による比較検討
川島 慶之野口 佳裕伊藤 卓水島 豪太高橋 正時喜多村 健堤 剛
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2016 年 119 巻 2 号 p. 110-117

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抄録

 ANCA 関連血管炎 (AAV) には, 顕微鏡的多発血管炎 (MPA), 多発血管炎性肉芽腫症 (GPA), および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA) が含まれる. 今回われわれは, 2004年から2014年の期間に耳症状を訴えて当科を受診した全身型 AAV の20例 (MPA 5例, GPA 9例, EGPA 6例) を対象に, 耳科学的臨床像を全身型により比較検討した. MPA の40%, GPA の56%, EGPA の83%において耳症状が初発症状であった. GPA, EGPA に随伴した耳症状は耳痛, 耳漏, 難聴, 耳閉塞感, めまいと多彩であったのに対し, MPA では難聴, 耳閉塞感のみであり, 耳痛, 耳漏は認めなかった. GPA では耳症状出現から比較的早期に AAV および ANCA 関連血管炎性中耳炎 (OMAAV) の診断に至ったのに対し, EGPA では耳症状出現から OMAAV 診断まで経過が長く, かつ AAV の診断に遅れて OMAAV の診断に至る症例が多かった. 一方, MPA では OMAAV 診断基準に合致しない症例が多かった. 耳病変を合併した全身型 AAV においては, 耳症状が初発症状である症例が多く, AAV の早期診断において耳鼻咽喉科医の果たす役割が大きいことが再確認された. 成人発症の中耳炎, 内耳炎の症例では, AAV の可能性を考慮して積極的に精査を進めること, 診断基準上 AAV や OMAAV と診断されない症例においても慎重に経過観察を続けることが重要である.

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© 2016 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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