日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
小児急性中耳炎への対応
上出 洋介
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2016 年 119 巻 3 号 p. 175-180

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抄録

 小児急性中耳炎の診断・治療については, 本邦では小児急性中耳炎診療ガイドライン, 米国小児科学会の The diagnosis and management of acute otitis media が挙げられる. これら二つの内容について簡単に説明を加え, さらに日常診療でのより実践的な中耳炎への対応について説明する
. 耳鼻咽喉科専門医として大切なことは上記ガイドラインの内容を理解することも当然だが, 受診する乳幼児に対して風邪や中耳炎症状の有無にかかわらず中耳炎を起こしていないか鼓膜を確認するよう習慣付けをすることである.
 実践的対応として中耳炎病態の変化に柔軟にかつ適確に対応するために, 各施設での画像ファイリングシステムの構築を勧める.
 肺炎球菌ワクチンの定期接種や新規抗菌薬の登場により中耳炎起炎菌の変貌が疑われる. 特に肺炎球菌の検出頻度の減少と耐性菌比率が低下した. インフルエンザ菌ではむしろ BLPAR が出現し治療方法が難しくなってきた. 治療開始に当たり肺炎球菌迅速検査キットを用いた診断は抗菌薬選択に大いに役立つ.
 複雑に推移する難治性中耳炎, 遷延性中耳炎, 反復性中耳炎治療として鼓膜換気チューブ留置が選択肢となる. 免疫低下, 免疫不全による反復性中耳炎に対しては血漿分画製剤献血ヴェノグロブリン投与が適応となった.

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© 2016 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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