日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
経口的咽喉頭手術 (内視鏡診療科との連携)
上田 勉卜部 祐司
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2018 年 121 巻 7 号 p. 861-868

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抄録

 拡大内視鏡や narrow band imaging (NBI) を代表とする画像強調観察法など内視鏡診断法の進歩により, 多くの頭頸部表在癌の発見ができるようになった現在, ほぼ無症状の頭頸部表在癌を発見することにおいて, 内視鏡診療科医の存在は大変重要である.

 経口的咽喉頭手術に際しても, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が単独で行っている施設もあれば, 内視鏡診療科医と合同で, 主に耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が切除する施設や内視鏡診療科医が主に切除する施設などとさまざまと思われるが, いずれの場合にしても内視鏡診療科の協力は必須と思われる. 今回当院で行っている経口的咽喉頭手術を中心に, 手術適応の決定, 手術器機, および安全確実に手術を遂行するために心がけていることについて解説する.

 耳鼻咽喉科・頭頸部外科で頭頸部表在癌を発見した場合は, 重複癌の精査も含めて内視鏡診療科へ上部消化管内視鏡 (esophagogastroduodenoscopy: EGD) の依頼をし, 頭頸部表在癌の再評価をしてもらう. 内視鏡診療科で頭頸部表在癌を発見した場合は, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ紹介してもらう.

 当院内視鏡診断科では, 咽喉頭の内視鏡検査に際してもほかの内視鏡検査と同様に一定の観察の仕方で見落としのないように行っており, 解像度の高い画像で早期発見や深達度診断の重要な役割を担っている.

 当院では, 腫瘍を認めた場合, 精査を行い, 頸部リンパ節転移のない表在癌を経口的咽喉頭手術の適応として, 彎曲型咽喉頭直達鏡で視野展開をした後に経口的に鉗子や電気メスを挿入し, 内視鏡補助下の手術 endoscopic laryngo-pharyngeal surgery (ELPS) を行っている. 術後は1年目に4カ月毎の EGD を行い, 徐々に間隔を長くするよう観察を行っている.

 経口的咽喉頭手術の適応が拡大してきている中, 安全確実に頭頸部表在癌治療を遂行するためには, 内視鏡診療科と耳鼻咽喉科・頭頸部外科との連携は勿論のこと, それぞれの施設の状況にあった他科連携による診療体制を構築し, 患者の不利益にならない治療を提供できることが望ましいと思われる.

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