日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
消化器疾患術後の嚥下障害患者における嚥下内視鏡検査による経口摂取確立の予測
髙尾 なつみ千葉 欣大佐野 大佑折舘 伸彦
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2019 年 122 巻 10 号 p. 1304-1313

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抄録

 消化器疾患術後の嚥下障害患者において, 初回嚥下内視鏡検査 (以下 VE) の結果から経口摂取の予後予測が可能か検討する.

 2013年1月~2017年9月までに, 当院消化器外科で施行された全身麻酔下手術症例のうち, 術後嚥下機能評価目的に当科に紹介された28症例を対象とした. 初回 VE 時から最長80日後までの経口摂取状況を追跡調査し, 1) 経口摂取の可否, 2) 代替栄養離脱の可否について, 患者背景 (年齢, 性別, 術前の嚥下性肺炎既往の有無, 気管切開の有無, 声帯麻痺の有無, ASA-PS 分類, 手術時間), 初回嚥下内視鏡検査のスコア評価法 (以下兵頭スコア), VE 時の誤嚥の有無との関連を単変量解析 (Fisher 検定) にて検討した. また, Kaplan-Meier 法を用いて, 初回兵頭スコアの高低別 (cut off 値6点) および初回 VE 時の誤嚥の有無別の経口摂取開始率と代替栄養離脱率を検討した. 有意差検定には log-rank 検定を用いた (p < 0.05).

 初回 VE 時から最長80日後までの経過観察において, 経口摂取可能例26例, 不能例2例, 代替栄養離脱例19例, 依存例9例であった. 初回兵頭スコア ≦ 6点群19例, 兵頭スコア > 6点群9例, 初回VE時に誤嚥あり10例, 誤嚥なし18例であった. 経口摂取・代替栄養離脱の可否別の単変量解析において, 患者背景因子, 初回兵頭スコア, VE 時の誤嚥の有無について有意差を認めなかった. しかし, 兵頭スコア高値群は兵頭スコア低値群と比較し, 経口摂取開始や代替栄養離脱までに有意に長い日数を要した. また VE 時の誤嚥の有無別においても, 経口摂取開始までに有意差は認めなかったが, 代替栄養離脱までに有意に長い日数を要した.

 消化器疾患術後の嚥下機能評価として初回 VE 時の兵頭スコアおよび誤嚥の有無は, 最終的な経口摂取可否の予測因子にはならないが, 代替栄養離脱までの期間を予測する因子であることが示された.

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