日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
頭頸部がんに対する放射線治療の現状と展望
頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療―先進医療から保険医療へ―
小藤 昌志
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2019 年 122 巻 2 号 p. 93-98

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抄録

 重粒子線治療は通常の放射線治療 (X 線治療) と比較して線量集中性と殺細胞効果に優れる. そのため手術非適応のX線治療抵抗性が予想される腫瘍に対して治療効果が期待される. 重粒子線治療は日本が世界をリードする治療法であり, 治療施設も増加し現在国内では6施設での治療が可能となっている. 2015年に頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療の多施設後ろ向き観察研究が行われた. 当時治療実績のあった全4施設から908例の治療データが登録された. 症例の約半数は鼻副鼻腔腫瘍であり, T3, T4 症例が約9割を占めた. 病理組織は腺様嚢胞癌, 粘膜悪性黒色腫, 腺癌といった X 線治療抵抗性腫瘍が症例の大半を占めた. いずれの疾患でも既報の X 線治療成績と比較して良好な治療成績が示された. 2003年より頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療は高度先進医療, 先進医療として行われてきたが, この多施設研究での成績が評価され2018年4月より頭頸部悪性腫瘍 (口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く) に対する重粒子線治療は保険収載された. 治療施設が増加し, 保険が適用となったことで地理的, 経済的な問題で治療が困難であった患者にも治療機会が増えることが期待される.

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