日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
総説
急性中耳炎との関係を重視した, 小児滲出性中耳炎の治療
伊藤 真人
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 122 巻 3 号 p. 196-201

詳細
抄録

 小児滲出性中耳炎と急性中耳炎は, 鼓膜所見だけでは区別が難しいこともあり, 耳痛や発熱などの急性症状出現後48時間以内に受診した場合は急性中耳炎と診断される. また急性中耳炎を繰り返す反復性中耳炎の寛解期には, 滲出性中耳炎と診断される場合もあり, 中耳貯留液を認める状態が寛解せずに活動性の急性中耳炎が再燃する症例も散見される. このように, 小児急性中耳炎と小児滲出性中耳炎とは相互に移行する関係にあり, その境界を厳密に分けることが難しいばかりではなく, 鼓膜チューブ留置術などの治療選択においても, どちらか片方の疾患だけを念頭において治療を決定できるものではない. すなわち治療を考える上では,「慢性中耳炎以外の小児中耳炎」として, 急性中耳炎と滲出性中耳炎という, 移行する疾患群の全体像を俯瞰する必要がある.

 外科治療 (主として鼓膜チューブ留置術) の適応決定のために, 病院・診療所を問わずすべての耳鼻咽喉科専門医に求められることは, 正確な鼓膜所見の評価とおおよその聴力域値を推定することであり, 必要な症例を選別して精密聴力検査や手術管理が可能な施設に紹介すべきである. 難治性急性中耳炎には遷延性中耳炎と反復性中耳炎があるが, このうち寛解期にも中耳貯留液 (MEE) を認めるタイプの反復性中耳炎は鼓膜チューブ留置術の適応ともなる.

 言語・構音障害がみられる場合など, 難聴による症状を有する症例や難治症例 (At-risk children) においては, より積極的な鼓膜チューブ留置術が勧められる.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top