日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
慢性めまいへの対応―心因性めまい―
五島 史行
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2019 年 122 巻 8 号 p. 1102-1106

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抄録

 心因性めまいは心因が関与するめまいであるが, 大きく分けると純粋に精神疾患によって発症する ① 狭義の心因性めまいと ② 合併する精神疾患が器質的前庭疾患 (メニエール病など) を悪化させている二つの場合がある. 両者をあわせて広義の心因性めまいと呼ぶ. 広義の心因性めまいに含まれ近年バラニー学会で診断基準が作成された持続性知覚性姿勢誘発めまい (PPPD) は従来めまい症とされていた患者の中に一定数含まれている.

 診断では耳鼻咽喉科医は心因の評価には習熟していないので, まずは前庭疾患の有無を評価する. めまい症状を引き起こす可能性がある精神疾患は不安障害とうつ病, 身体表現性障害である. 特に不安とうつの評価は重要である. 質問紙によるスクリーニングが有用でありめまいによる生活障害を評価する DHI (dizziness handicap inventory) が有効である. DHI にて重症とされる46点以上では高率に不安障害やうつを合併していることが知られている. またこのような心因の評価をしなくても PPPD の診断は診断基準に沿って行うことが可能である. 診断のポイントは3カ月以上にわたってほとんど毎日存在するめまい症状であり, 立位姿勢, 頭の動き, 視覚刺激によって増悪するものである. また, 一部の心因性めまいは重心動揺計で特徴的な所見を示すことで診断可能である. 治療の上で最も大切なことは, 正確な診断である. めまいの原因として重大な病気が存在しないことを保証する. 心因性めまいの多くは純粋な心因性ではなく, 軽度の前庭機能障害を合併していることが多い. 原因不明という診断を行うことは予後を不良にさせる. 実際の介入では認知行動療法が中心となる. 具体的にはめまいが治らないという認知に対してめまいのリハビリテーションをすることで症状が改善することを説明する. 薬物治療は補助的なものであり, 患者の治したいという意欲をもり立て, 医師依存の治療関係から患者自らが治療に参加する形にしていくことが重要である.

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© 2019 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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