日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
伝音・混合性難聴に対する人工中耳と能動型骨導インプラントの現状と将来
岩崎 聡
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2021 年 124 巻 3 号 p. 176-182

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抄録

 伝音・混合性難聴に対する振動子が体内に埋め込まれる人工中耳 (Vibrant Soundbridge: VSB) と能動型骨導インプラント (Bonebridge: BB) の現状と将来について概説する. 1983年世界に先駆けて本邦からリオン型人工中耳が開発され, その後 VSB が2000年に感音難聴に対して FDA の認可を取得し, 2006年 Colletti らが伝音・混合性難聴に対して, 正円窓に振動子である FMT を設置する新たな応用方法を報告した. VSB 手術は, 現在 FMT の留置部位によって正円窓留置法と卵円窓留置法の2つのアプローチ法がある. FMT と内耳のカップリングの補助としてカプラーを使用することができる. 現在認可されている VORP503 は MRI 1.5 テスラ対応となっている. 能動的骨導インプラントである BB は VSB の振動装置が側頭骨内に埋め込まれる点が異なるだけで, 2012年には CE マークの承認が得られているが, 本邦ではまだ保険収載されていない. 先天性外耳道閉鎖症に対して臨床研究が実施されている. 先天性外耳道閉鎖症に対する音質の自覚的評価を VSB, BB, Baha に実施し, VSB で明らかに良好な結果が得られた. したがって, われわれは第1選択を VSB とし, 乳突腔の発育不良例などの症例には BB などの骨導インプラントを選択している. 今後は一側性伝音・混合性難聴への適応拡大が課題である.

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