日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
スギ花粉症とダニの舌下免疫療法―自験例に基づく治療方針と工夫―
湯田 厚司
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2021 年 124 巻 7 号 p. 968-973

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抄録

 スギ花粉とダニの舌下免疫療法は, アレルギー性鼻炎治療の重要な治療として定着しつつある. 筆者は1,800例を超える SLIT の治療実績があり, 自験例に基づく治療方針や工夫を紹介する. 小児のスギ花粉症は急増しており, 最近の疫学調査から10歳未満の3人に約1人が10年以内にスギ花粉症を発症すると推測される. 2018年にスギ花粉とダニの舌下免疫療法が低年齢児にも治療できるようになった. 小児は成人と同じ用法用量で治療すればよく, 成人と同等の高い有効性があり, 安全性も成人と変わらない. SLIT 治療年数とともに効果の上乗せがあり, 治療終了後の効果持続を期待し, 4年間程度の継続治療を勧めている. 副反応は, 投与アレルゲンが増えると増え, 副反応で一時的減量が必要な例もあるが, 適切な時期に再増量を計画する. スギ花粉は全例が最大維持量にでき, ダニも適切な対処で最大維持量にできる. アドヒアランスが重要であるが, 患者の治療意欲を保つ工夫も必要である. 多重アレルゲン感作の例が多いが, 感作が多くても同じ効果を期待できる. 特にスギ花粉とダニの重複感作が多いので, 両方のアレルゲンで治療する Dual SLIT も安全にでき, 今後の治療例も増えるだろう. COVID-19 による患者受診抑制の中, 舌下免疫療法患者は影響を受けにくいので, 経営面も含めた大きな治療戦略となるだろう.

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