日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
小児感音難聴における長期経過の観察法と聴覚管理
杉内 智子岡本 途也浅野 公子河村 直子新井 景子大氣 誠道寺島 啓子
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 100 巻 7 号 p. 754-761

詳細
抄録

昭和大学病院耳鼻咽喉科補聴器外来にて長期間 (9年~22年) 聴覚管理を行った, 小児感音難聴症例45人について検討した. 当補聴器外来では「聴力検査経過表」を作成して聴力変動を評価し, 聴力の急性増悪に対して, ステロイド等を用いた積極的な治療と補聴指導を行って, 聴力維持と聴覚活用に努めている. この「聴力検査経過表」は標準純音聴力検査の結果を周波数別に書き込んだもので, 有意な聴力低下を端的に判別することができる.
経過中に聴力変動したものは45人中36人 (80.0%), うち29人は急性増悪を示した. 急性増悪の年齢別発症率は, 男女とも緩やかな三峰性の増加を示した.
経過観察最終時まで初期聴力を保てたのは, 45人中23人 (51.1%) で, うち14人は急性増悪 (1回~6回) から治療により回復したものであった. 初期聴力を維持できなかった45人中22人 (48.9%) のうち, 7人は徐々に聴力低下したもので, 残りの15人は急性増悪 (1回~10回) 例であった. この15人の多くは, 経過途中の幾度かの急性増悪から治療により回復し, 小学校時代を越えて初期聴力を保つことができた. 「聴力検査経過表」は有用な聴力評価手法であり, これを活用し, 積極的な治療と指導を重ねた聴覚管理は効果的であった.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top