日本耳鼻咽喉科学会会報
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耳鳴患者における血清亜鉛値
血清亜鉛値と治療効果
越智 健太郎大橋 徹木下 裕継赤城 光代菊地 仁三井 雅夫金子 卓爾加藤 功
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1997 年 100 巻 9 号 p. 915-919

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抄録

耳鳴と亜鉛の関係はいまだ明らかではない. 本研究では耳鳴患者における血清亜鉛値を測定し, 実際に血清亜鉛値低下例には亜鉛を投与し治療効果を検討した. 耳鳴群の血清亜鉛値は86.8±13.0μg/dlであり, コントロール群の97.7±12.9μg/dlと比較し有意に低下していた. コントロール群の結果から血清亜鉛値が84.8μg/dl以下を低亜鉛血症とすると, 74人中36人 (49%) が低亜鉛血症であり, 19人に亜鉛による治療が試みられた. 9人に再度血清亜鉛値の測定が行われたが, 8人において血清亜鉛値は上昇し, 血清亜鉛値は有意に増加した. 11人に亜鉛による耳鳴の強さの変化を評価したが, 10人が改善し, 不変が1人であった. 治療前後の耳鳴の強さは有意に減弱した. 以上より, 亜鉛が, 少なくとも一部の耳鳴患者において重要な役割を演じていると考えられた. 血清亜鉛を測定することで, 耳鳴患者を分類することが可能となり, 治療効果向上につながると考えられた.

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