日本耳鼻咽喉科学会会報
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100 巻, 9 号
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  • 310例の統計的検討
    鈴木 晴彦, 竹内 洋介, 沼田 勉, 佃 朋子, 嶋田 文之, 今野 昭義, 金子 敏郎
    1997 年 100 巻 9 号 p. 893-899
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    過去11年間 (1984年6月-1995年6月) に千葉大学耳鼻咽喉科において耳下腺腫瘍もしくはその疑いで超音波検査を行った310例の超音波画像について, その診断成績と問題点について検討した. 使用装置は電子走査型および機械走査型を, 使用周波数は7.5MHz, 5MHz, 3.75MHzを用いた.
    症例の内訳は良性は246例 (再発14例), 悪性64例 (再発6例) であった. これらの超音波画像を, 良性型, 中間型, 悪性型に判定した. その正診率 (中間型は誤診とする) は79.0%であった. また再発例や血管腫, リンパ節などを除いた耳下腺腫瘍新鮮例268例 (良性210例, 悪性58例) の正診率は85.1%となった. なお中間型と判定したのは良性で18例, 悪性で13例, 全体では31例 (11.6%) であった. 新鮮例268例をさらに検討すると, 腫瘍の大きさとの関係では, 良性腫瘍では大きくなるほど, 悪性腫瘍では小さくなるほど誤診する傾向にあった. また超音波画像をretrospectiveに境界エコー, 内部エコーのそれぞれについて検討すると, 良性腫瘍では良性型と判定したのは, それぞれ84.3%, 85.7%とほぼ同様の成績であったが, 悪性腫瘍では悪性型と判定したのはそれぞれ58.6%, 43.1%となり, 境界エコーの方が内部エコーより診断に貢献すると考えられた. また高輝度エコーの出現率は悪性腫瘍では51.7%に見られたが, 良性腫瘍でも14.8%に出現した.
    耳下腺腫瘍の良悪性の鑑別に超音波検査は有意義な検査法であると思われた.
  • 日高 利美
    1997 年 100 巻 9 号 p. 900-908
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    高脂質血症と感音難聴との合併が注目されモルモットで食餌性高脂血症状態での蝸牛の観察が行われているが, いずれも短期間の高脂血症状態における内耳の観察であり, 長期間の高脂質血症作製は困難とされている. ハムスターは血清脂質レベル, 胆汁酸組成や肝コレステロール生合成能がヒトに類似しており, 動脈硬化のモデルや肝臓における負荷実験によく用いられている. またハムスターを使った薬物負荷の実験では抵抗性のため大量投与や長期観察に適していると考えられ, ハムスターは長期間の高脂質血症状態下の内耳の観察が可能と推定し, 実験的に高脂質血症を作製し血清学的変化と聴力の変動と共に内耳の形態学的観察を電顕的に観察し, 高脂質血症と難聴の関係について検討を行った. 聴性脳幹反応 (ABR) で可聴域値を測定後, ハムスター用飼料にコレステロール3%, 牛脂肪15%を配合し高脂質飼料とし, 生後2カ月ハムスターを30日群, 60日群, 90日群, 120日群, 150日以上群に分け, 生後6カ月ハムスター30日群とともに自由に摂取させ, 各群の摂取終了時にABRで可聴域値を測定後, 麻酔下に採血し血清分離を行った後, 側頭骨を摘出し走査電顕, 透過電顕にてコルチ器と血管条の観察を行った. 90日群1匹と150日以上群2匹のみに死亡を認め, いずれの群も著明な高コレステロール血症を示し, ABRでは軽度の聴力障害を認めた. 内耳の形態的観察では, 血管条表面に突起や突出, 破裂像や, 毛細血管周囲の変性, 血管条辺縁細胞, 中間細胞の空胞変性が認められ, コルチ器では外柱細胞よりライソゾーム様構造物を含む突出物が認められた. ハムスターは高脂質血症状態下でも比較的長期に観察可能であり, 内耳の病態についての観察モデルに適している. ABRでの軽度難聴や観察された内耳の形態的変化は, 高脂質血症状態下における内耳の機能障害の発生に関与するものと推定される.
  • 井之口 昭, 安松 隆治, 原 崇, 小宮山 荘太郎
    1997 年 100 巻 9 号 p. 909-914
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ヒト味覚障害に対する他覚的味覚検査法の開発ならびに定量的評価を目標として, 麻酔下モルモット8頭を用いて大脳表面より味覚誘発電位を記録した. 食塩, 塩酸, 塩酸キニーネ水ではいずれも陽性波が記録でき, そのオンセット潜時, ピーク潜時, 持続時間および波形に味液の種類による大きな差異は認めなかった. 蔗糖水および蒸留水では明らかな電位変化は認められなかった. 口腔内感覚を司る三叉神経の影響を除外した味覚誘致電位の導出は可能であり, かつ十分に再現性があることが判明した. また電位波高は食塩, 塩酸, 塩酸キニーネ水では味液濃度の上昇とともに増大し, 電位波高と味液濃度の対数変換値は正の直線関係を示した. このことより, 味液濃度と誘発電位波高との関係を測定することによって味覚感知レベルの定量的評価が可能であると推定された. 頭蓋骨表面からも, 大脳表面から導出される味覚誘発電位と比較して電位波高の減弱はあるものの, オンセット潜時とピーク潜時に差異のない誘発電位が記録でき, 頭皮上での味覚感知レベルの定量的評価の可能性が示唆された.
  • 血清亜鉛値と治療効果
    越智 健太郎, 大橋 徹, 木下 裕継, 赤城 光代, 菊地 仁, 三井 雅夫, 金子 卓爾, 加藤 功
    1997 年 100 巻 9 号 p. 915-919
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳鳴と亜鉛の関係はいまだ明らかではない. 本研究では耳鳴患者における血清亜鉛値を測定し, 実際に血清亜鉛値低下例には亜鉛を投与し治療効果を検討した. 耳鳴群の血清亜鉛値は86.8±13.0μg/dlであり, コントロール群の97.7±12.9μg/dlと比較し有意に低下していた. コントロール群の結果から血清亜鉛値が84.8μg/dl以下を低亜鉛血症とすると, 74人中36人 (49%) が低亜鉛血症であり, 19人に亜鉛による治療が試みられた. 9人に再度血清亜鉛値の測定が行われたが, 8人において血清亜鉛値は上昇し, 血清亜鉛値は有意に増加した. 11人に亜鉛による耳鳴の強さの変化を評価したが, 10人が改善し, 不変が1人であった. 治療前後の耳鳴の強さは有意に減弱した. 以上より, 亜鉛が, 少なくとも一部の耳鳴患者において重要な役割を演じていると考えられた. 血清亜鉛を測定することで, 耳鳴患者を分類することが可能となり, 治療効果向上につながると考えられた.
  • 600症例の検討
    渡邊 健一, 神尾 友信, 大河原 大次, 青木 秀治, 馬場 俊吉, 八木 聰明
    1997 年 100 巻 9 号 p. 920-926
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    バンドノイズマスカー (BNM) による耳鳴治療を行った. BNM装用前後で耳鳴の客観的評価を行い, BNMによる耳鳴抑制効果との関係を検討した.
    BNM装用により600名中394名 (66%) に耳鳴の後抑制が認められた. 疾患別では老人性難聴で124名 (73%) と最も高く, 突発性難聴で16名 (40%) と最も低かった. 耳鳴減弱例では装用後, 耳鳴ラウドネスは有意に減少した. 耳鳴不変例および悪化例では耳鳴ラウドネスに有意な変化は認められなかった. 耳鳴周波数は全例で有意な変化は認められなかった. residual inhibitionとBNMによる耳鳴抑制効果の間には有意な相関は認められなかった. 聴覚域値には有意な変化が認められなかった.
    以上の結果より, BNMによる耳鳴抑制機序について考察した. また, 全症例でBNM装用による重篤な副作用は認められず, BNMは外来または家庭で容易に行い得る有用な耳鳴治療法の一つと考えられた.
  • 張 徳明
    1997 年 100 巻 9 号 p. 927-936
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ストレプトマイシン (SM) 投与によるモルモット平衡斑耳石の変性過程ならびにその回復様式, 巨大耳石の形成および消失過程について走査電顕を用いて形態学的に検討し, さらにその時の耳石のCa動態をテトラサイクリンをCaのトレーサーとして用いて検討した. SM投与1週後より, 球形嚢と卵形嚢では, 耳石は減少し始め, 巨大耳石の出現が認められた. 耳石へのCaの取り込みは低下していた. 耳石数の減少の程度は卵形嚢ではSM投与4週間, 球形嚢では, 6週間まで大きくなったが, その後耳石のCaの取り込みとともに耳石の量も回復し, 巨大耳石も認められなくなった. このような耳石の変化は内リンパのCaの調節に強く関連していると考えられた.
  • 望月 高行
    1997 年 100 巻 9 号 p. 937-945
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) の上気道の形態学的異常の把握, 閉塞部位診断, 重症度や手術効果の予測のため, Fujitaが論じた軟口蓋低位とセファロメトリとの関係について検討した. 対象は夜間睡眠検査でOSASと診断し, 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術 (UPPP) を施行した日本人成人男性患者45名である. 方法は視診において開口時および発声時の軟口蓋と舌背との位置関係をA, B, Cの3型に肉眼分類し, 各群において肥満度, 手術による改善度, セファロメトリ計測値との関係について統計学的手法を用い検討した. この3型のうち軟口蓋低位ありと判断された型をC型とした. (1) C型では術前の無呼吸指数が大きく, また血中最低酸素飽和度も低く病態的に重症型であった. (2) C型は後鼻棘―舌骨間 (PNS-H) が長く, 口腔面積が小さく, 舌全体, 特に舌上半分の面積がA型やB型に比べ大きかった. (3) C型症例で舌上半分の面積が15cm2を超えるような例ではUPPPだけでは手術効果が不十分であった. 視診で軟口蓋低位ありと判断したC型の中には, (a) 実際に軟口蓋が長いために自由縁が低位置を示しているタイプ (軟口蓋低位型), (b) 軟口蓋も長く舌も大きいタイプ (混合型), (c) 舌の大きさが問題で軟口蓋低位がありと判断されるタイプ (巨舌症型) の3つの亜型が混在していると考えられた. 以上より, セファログラムを併用し軟口蓋と舌の大きさを確認することで, 上気道の形態学的異常, 閉塞部位, 重症度, 治療法の選択, 手術効果の予測が可能と考えられた.
  • 高橋 光明, 藤田 豪紀, 安達 俊秀, 榎本 啓一, 石井 秀典, 吉田 真子, 北南 和彦, 坂東 伸幸, 執行 寛
    1997 年 100 巻 9 号 p. 946-951
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    一側の耳下腺内に多発性の腫瘤性病変をきたす疾患は少ない. 今回, 画像診断 (シアロ-CTまたはMRI) により一側耳下腺内の多発性腫瘤と診断しえた13症例について集計した. 病理診断では10例が耳下腺の上皮性腫瘍で, このうち術後に再発した多形腺腫が6例と最も多く, ワルチン腫瘍が3例, 異なる組織型の上皮性腫瘍の混在したものが1例みられた. 他の3例は腺内リンパ節病変で, 悪性リンパ腫, 結核, 転移性腫瘍 (扁平上皮癌) の各1例がみられた. 全例耳下腺部の腫瘤, 腫脹を主訴に来院した. 触診上, 9例は単発性の, 4例は複数の無痛性腫瘤として触知された. また, 腺内リンパ節病変では頸部リンパ節腫大がみられた. 画像診断により判定した腫瘤の個数は9例は2個, 4例は3個以上あった. 画像上, 一側耳下腺内に複数の腫瘤を確認したとき, 多形腺腫の再発腫瘍, ワルチン腫瘍, 腺内リンパ節病変を鑑別しながら検索を進めることが重要である.
  • 今野 昭義, 沼田 勉
    1997 年 100 巻 9 号 p. 952-955
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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