耳前部に生じた石灰化上皮腫3症例について報告した. 年齢は9歳から15歳で全例が女性であった. 腫瘍の大きさは20×20mmから34×22mmであった. 1症例でSCC抗原が術前検査では高値, 腫瘍摘出後には正常値を示していたことから, 石灰化上皮腫とSCC抗原の関係を示唆する興味深い症例と思われた. 1症例で腫瘤を覆う皮膚に瘻孔の形成と茶褐色漿液性の分泌物がみられ, まれな症例と思われた. また, 同症例で好塩基細胞群に核分裂像が散見され, 今後の注意深い経過観察が必要であると思われた. 好発部位が頭頸部領域であるにもかかわらず, 耳鼻咽喉科領域での本疾患に対する認識は必ずしも高いものではないと思われるため, 疫学, 臨床所見, 検査所見, 治療, 予後などについて文献的考察を行った.