日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 1 号
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  • 沖田 渉, 佐々木 徹, 高松 俊輔, 吉田 克也, 石橋 敏夫, 水野 正浩
    1999 年 102 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (発表目的) 頭頸部腫瘍の画像診断において頸部リンパ節の検索は必須である. 軟部組織濃度分解能が優れているMRIはこれに適しており, 特に特殊撮像法である脂肪信号抑制法は頸部の周囲脂肪信号を抑制してリンパ節を明瞭に描出するのに有効であるが, 撮像に長時間を要し, 改善が求められていた. 最近これを解決して短時間で撮像が完了する高速脂肪信号抑制法 (turbo-STIR) が開発された. これをわれわれの頭頸部腫瘍症例で使用し, その有用性を検討することを目的とする.
    (対象・方法) 国立東静病院と東大分院において治療した各種頭頸部腫瘍15例を対象とし, 治療前画像診断にMRI従来法とturbo-STIRを行った. 両者において, 頸部リンパ節の描出に差があるかを検討した.
    (結果) MRI従来法ではリンパ節と周囲の筋組織と信号が類似し, 判別が困難な例がみられたが, turbo-STIRではリンパ節周囲の脂肪信号が選択的に抑制され, リンパ節は高信号となって筋との信号差を生じ, 短時間に明瞭な描出が可能であった. しかし転移性, 非転移性の鑑別はturbo-STIRのみでは困難であった.
    (結論) turbo-STIRは頸部リンパ節を短時間に明瞭に撮像できる. 従来の画像診断と併用すればより確実な頸部リンパ節の存在診断に応用できると考える.
  • 堀 弘樹, 菅野 秀貴
    1999 年 102 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    Lazaroidは脂質過酸化反応を抑制し, 活性酸素を消去する作用をもつfree radical scavengerである. ラットを用いて, CDDPの聴器障害および腎障害に対するLazaroidの軽減効果の有無を検討し, さらにCDDPの抗腫瘍効果に対するLazaroidの影響について検討した. CDDP, Lazaroid併用群のCAP閾値上昇はCDDP単独群と比較して有意に軽度であり, 外有毛細胞の障害の程度も明らかに軽度であった. 一方, 両群間の血清BUN値に有意差は認められず, 腎の病理組織学的所見にもほとんど差異はなかった. TGRを指標とした検討で, 両群の間にはCDDPの抗腫瘍効果に差は認められなかった. これらの結果より, LazaroidはCDDPの腎障害に対する軽減効果はないが聴器障害を著明に軽減すること, Lazaroidの併用がCDDPの抗腫瘍効果には影響を及ぼさないことが示唆された.
  • 小野田 恵子, 池田 稔, 杉谷 雅彦
    1999 年 102 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳前部に生じた石灰化上皮腫3症例について報告した. 年齢は9歳から15歳で全例が女性であった. 腫瘍の大きさは20×20mmから34×22mmであった. 1症例でSCC抗原が術前検査では高値, 腫瘍摘出後には正常値を示していたことから, 石灰化上皮腫とSCC抗原の関係を示唆する興味深い症例と思われた. 1症例で腫瘤を覆う皮膚に瘻孔の形成と茶褐色漿液性の分泌物がみられ, まれな症例と思われた. また, 同症例で好塩基細胞群に核分裂像が散見され, 今後の注意深い経過観察が必要であると思われた. 好発部位が頭頸部領域であるにもかかわらず, 耳鼻咽喉科領域での本疾患に対する認識は必ずしも高いものではないと思われるため, 疫学, 臨床所見, 検査所見, 治療, 予後などについて文献的考察を行った.
  • 吉田 友英, 山本 昌彦, 折原 廣巳, 三宅 孝功, 長舩 宏隆, 小田 恂
    1999 年 102 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    老人では, 姿勢の維持や歩行などに変化が起こり, 転落, 転倒しやすくなる. それは, 体のバランスを保持するために関係する視覚系, 前庭系, 深部知覚系の入力の変化により生じるものと考えられる. 私達は, Body Tracking Test (以下BTTと略す) を用いて, これまでに動的体平衡機能の研究を進めてきた. 今回, このBTTを用いた動的体平衡機能の加齢による影響について解析, 検討を行ったので報告する.
    対象は, 健康人272人である. BTTは, コンピュータのディスプレー上に表示された移動する視標を重心の移動によって視標が動く方向と同じ方向に追随させる方法で行った. 視標の移動刺激は, 左右, 前後方向定速刺激を用い, 移動速度は, 0.125Hzとした. BTTの追随機能を評価するために, BTTの視標と重心移動の位相の一致率に基づいた5段階追随評価法を用いて評価を行った.
    各年齢ごとに動的体平衡機能の加齢変化を見たが, 左右, 前後方向定速刺激BTTともに40歳代から追随機能の低下がみられた. これは, 入力系の生理学的な加齢変化の起こる年齢と矛盾していない結果であった.
    20から30歳代では, 左右方向定速刺激BTTではAランクの占める割合の増加がみられたが, 前後方向定速刺激BTTではあまり差がみられなかった. 左右, 前後方向定速刺激BTTとも40から50歳代になるとA, Bランクの占める割合が少なくなった. Eランクがみられ始めたのは, 左右方向定速刺激BTTでは40歳代, 前後方向定速刺激BTTでは50歳代であった. さらに60から80歳代と高齢になるにしたがいC, D, Eランクの占める割合が多くなるが, 前後の方が左右方向定速刺激BTTに比べてその割合は小さい傾向がみられた. これまでも静的体平衡機能検査にて左右より前後動揺に有意な増加を示す報告がみられる. 今回の結果をあわせ, 高齢者では外的刺激に対してはむしろ前後方向のすばやい立ち直りでバランスを保っているのではないかと考えられた.
  • 壬生町のアンケート調査から
    田中 晃, 岩瀬 朗子, 谷垣内 由之
    1999 年 102 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症の有症率は1979年頃より増加している. そこで獨協医科大学の所在地である栃木県壬生町でスギ花粉症の有症率を知る目的で町民を対象としたアンケート調査を行った. その結果有症率は1988年に15.6%であったものが1996年では25.0%まで増加していた.
    スギ花粉症の有症者の年齢分布をみると, 1988年は10~40歳代に多く, 1996年では10~50歳代に増加傾向を認めた. 両年とも有症者は女性のほうが多かったが, 1~19歳では男性のほうが多かった.
    年齢層別有症率では, 有症率の高い年齢層は年齢分布と同様であったが, ピークはともに30歳代であった.
    栃木県壬生町での8年間のスギ花粉症の増加は著しかったが, 地域により気候, 環境が異なるため, 今後全国各地域の疫学調査が必要と思われた.
  • 嘉村 恵理子, 八木 聰明
    1999 年 102 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    OVARは重力を利用した耳石器刺激法である. OVARにより誘発される眼球運動の報告は数多く見られるが, いずれも水平, 垂直2成分を解析したものである. OVARによる耳石器-眼運動には回旋眼球運動が存在し, 耳石器機能を知るためにはその解析が必須であると考えられるが, 定量的な評価方法がなく余り検討がされていない. 今回, 我々はコンピュータ画像解析装置を用いて, この眼球運動を三次元解析し水平, 垂直, 回旋の3成分での検討を行った.
    その結果, 3成分で回転に伴う周期的な変調成分を認めた. 水平成分は右下頭位で, 垂直成分は鼻下頭位でそれぞれの最大値を示し, 回旋成分はこの2つの成分の中間で最大値を示した. 変調成分は3成分のうち回旋成分が最大だった.
    頭位の変化と眼球運動の振幅の関係から, OVARによる眼球運動の水平成分は卵形嚢の, 垂直成分は球形嚢の刺激により生じたものと考えられた. また回旋成分は卵形嚢への刺激により生じたものと推測されるが, 水平成分とは異なった位相での動きをすることが分かった.
    バイアス成分は従来の報告と同様, 水平成分で回転と反対側に認めたが, 他の2成分については明らかではなかった.
  • 頸部誘発眼振の三次元解析から
    大山 義雄
    1999 年 102 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    前庭代償における頸部深部知覚入力の関与を検討するため, 一側前庭機能障害後前庭の代償が完成された21症例の後頸部に周波数約110Hz, 振幅約1mmの振動刺激を加え, 誘発された眼振をコンピュータ画像解析システムにて三次元解析した.
    その結果, 全21症例のうち12例 (57%) で水平, 垂直, 回旋の全3成分が認められた. 水平成分は全症例に認められ, かつ健側向きであった. 回旋成分は, 右障害では時計回り, 左障害では反時計回りであった. 垂直成分は, 症例により上向き, 下向きが混在していた. 3成分の平均緩徐相速度を計算し, 3成分の緩徐相速度の構成比を求めると水平57%, 垂直23%, 回旋20%であり, 水平成分が最大であった. しかしその比率に一定の傾向はなかった.
    また, 頸部入力と前庭出力, とくに半規管出力との関連を検討するために, 頸部誘発眼振の速度ベクトルを既知の半規管座標とともに二次元平面に展開した. その結果, 3つの半規管座標軸に比較的一致する症例から全く一致しない症例まで様々であった. しかし, 3つの半規管のなかでは, その速度ベクトルが外側半規管軸に最も近い症例が多かった.
    以上の結果から, 頸部固有受容器に振動刺激を与えたことにより, 潜在していた前庭の不均衡が顕在化し, 眼振として現れたものと考えられた. また頸部誘発眼振を三次元解析し, 全3成分とも認められたが水平成分が優位であったこと, 眼振の速度ベクトルが外側半規管座標軸付近に最も集積したことから, 頸部自己受容器からの求心性入力は主に水平系の前庭動眼反射路に関与していると考えられた. しかし, 中には垂直・回旋成分優位の症例もあり, ベクトル分析で単一の半規管座標軸に全く一致しない症例やむしろ垂直半規管座標軸に一致する症例もあり, 垂直系の前庭動眼反射路も含め複数の経路を介して眼振が発現していると推測された.
  • 中塚 滋, 鈴木 直弘, 中林 成一郎, 小岩 哲夫, 高坂 知節
    1999 年 102 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1983年-1997年までの毎年のスギ花粉飛散シーズン中の日々の花粉飛散数の計測と飛散期間中の経過日数および飛散開始後の最高気温との関係について調査し, 翌日のスギ花粉飛散数の予測が可能であるか検討した. まずスギ花粉飛散数は飛散開始初期には飛散数が少なく, 中期には飛散の多い日と少ない日が数日周期で繰り返し, 後期になると再び少なくなることが判明した. このため日々の飛散数の積算値ならびに総飛散数に占める日々の飛散数の積算率は共に, 飛散開始後の経過日数と最高気温の積算値に対し, S字状のカーブを描くことも判明した. このS字状カーブの回帰曲線を求め, さらに計算処理することで, 翌日の飛散数の予測を行った. その結果, 経過日数からは予測が困難で, 最高気温の積算値からは予測が可能であった. さらに, この回帰曲線を利用することで, 飛散開始後10-20日後の積算飛散数よりその年の総飛散数の予測が可能となった. これらを用いてスギ花粉1日飛散量予測の精度の向上を計ることができた.
  • 石井 歓, 朝倉 光司, 形浦 昭克
    1999 年 102 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎の病態におけるサイトカインの関与について検討する目的で, ダニアレルギー患者, 非ダニアレルギー患者および正常人を対象としてダニ抗原刺激による末梢単核球の増殖反応の測定および末梢単核球から産生されるサイトカインの定量を行った.
    末梢単核球のPHA刺激後の増殖反応はダニアレルギー群, 非ダニアレルギー群および正常群の間で有意な差は認めなかったが, ダニ抗原刺激の際の増殖反応はダニアレルギー群が正常群に比して有意に高値を示した.
    末梢単核球から産生されるサイトカインはIL-4およびIL-5はともにダニアレルギー群ではダニ抗原刺激により有意に産生増加を認めたが, 非アレルギー群や正常群は変化を認めなかった. IFN-γの産生はダニ抗原刺激時にはダニアレルギー群, 正常群ともに有意な産生増加を認め, ダニ抗原刺激時の産生量は両群で差を認めなかった. IFN-γとIL-4の比 (IFN-γ/IL-4) を比較検討したところ, ダニ抗原刺激時にはアレルギー群に比して正常群が有意に高値を示した.
    以上よりダニアレルギー患者の末梢単核球は抗原暴露後にTh2優位のサイトカイン産生パターンを示すことが明らかとなった.
  • 江澤 進
    1999 年 102 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 平衡機能の加齢変化を, 振子様回転刺激により生ずる前庭眼反射の利得, 位相を指標として検討した.
    (対象および方法) 健常者, 一側末梢前庭機能障害者を対象として20歳以上40歳未満の若年群, 40歳以上65歳未満の中年群, 65歳以上の高年群に分け, 正弦波振子様回転刺激 (振幅30°周波数0.25Hz, 振幅60°周波数0.1Hz) による前庭眼反射の利得, 位相およびVS値について比較検討した.
    (結果) 利得においては年齢が上がるにつれ有意に減少し, 位相においては年齢が上がるにつれ位相のずれが有意に増大する傾向が認められた. しかし, 前庭眼反射のVS値については, 年齢による差を認めなかった.
    健常者と一側末梢前庭機能障害者の間は, 健常者と一側末梢前庭機能障害者の健側には有意差はないものの, 利得と位相において健常者と一側末梢前庭機能障害者の患側との間に有意差を認めた. VS値においては健側・患側ともに有意差は認めなかった.
    (結論) めまい疾患における平衡機能検査においては, 加齢による生理的変化を念頭において, 十分検討する必要がある.
  • 下鼻甲介のレーザー手術
    洲崎 春海
    1999 年 102 巻 1 号 p. 84-87
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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