術後性上顎嚢胞の手術法には,上顎洞根本術に準じる経口内法と,鼻内からすべての操作を行う鼻内法とがある.近年の,画像診断および内視鏡下鼻内手術の進歩と普及に伴い,慢襲の少ない鼻内法が適応となる症例が増加しているが,経口内法によらざるを得ない症例も依然としてある.著者らの施設において,1994年7月から1999年6月までの5年間に手術を行った術後性上顎嚢胞の症例は,29例31側であった.そのうち経口内法を必要とした9例9側の画像所見について,検討を加えた.鼻内法で対応できた症例に比べると,1) 嚢胞が外側や前下方に位置する,2) 大きさが小さい,3) 鼻腔との間に骨性の隔壁がある,という特徴が認められた.嚢胞の存在様式はさまざまであるが,個々の症例では,これらの特徴が単独,または複数影響して鼻内法を困難にしていた.