日本耳鼻咽喉科学会会報
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乳幼児の初診時推定聴力と確定聴力
高橋 佳文澤田 亜也子森 靖子井脇 貴子川島 貴之宮崎 裕子角実 枝子三代 康雄久保 武
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2002 年 105 巻 9 号 p. 920-924

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抄録

自覚的聴力検査が施行不可能な乳幼児の聴力診断には,聴性行動反応の観察と聴性脳幹反応聴力検査(ABR, Auditory Brainstem Response)に代表される他覚的聴力検査の組み合わせで総合的に判断することが重要である.その診断の正確性について検討を行った.大阪大学幼児難聴外来を平成2年から7年の問に受診し,補聴器が必要な難聴と診断,補聴器適合を行った上で長年経過観察できた乳幼児29名58耳を対象とした.成長に伴い,遊戯聴力検査,一般的な純音聴力検査と順次施行可能となるが,純音聴力検査が再現性ある結果として得られるようになった後の聴力を確定聴力とした.初診時に行った診断と,この確定聴力としての純音聴力検査を比較検討したところ,初診時に行った診断は補聴器適合に有用な正確性を有していた.クリック音を用いたABR検査で閾値が測定可能であった7名14耳ではそのABR検査閾値と,確定聴力の高音部は良く一致した.多くの場合高音漸減型の感音性難聴であり,ABR検査閾値は十分4分法聴力を推察させるものであった.ABR検査で無反応であった22名44耳は高音部の聴力が悪く,特に4000Hz,8000Hzはスケールアウトも多くみられたが,一方で低音部聴力が比較的良く残存しているものも多い.身体障害者認定診断の際には十分な留意が必要と思われた.22名のうち18名(82%)は身体障害者2級に該当する聴力であったが,4名(18%)は2級に該当する聴力ではなかった.また特殊な聴力型を呈した症例も2例あったが,聴性行動反応の観察や条件詮索反応聴力検査により,その聴力型を推察し,補聴器適合に役立てることが可能であった.

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