日本耳鼻咽喉科学会会報
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105 巻, 9 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 石井 甲介, 阿部 弘一, 椿恵 樹, 山本 昌範, 丸山 直記, 穐田 真澄
    2002 年 105 巻 9 号 p. 915-919
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    SMP30は,肝臓ならびに腎臓などで成熟過程に伴い強く発現し,加齢に伴って減少する分子量30KDaの蛋白質であり,肝臓や腎臓などの分化した器官における細胞機能,特に細胞内Ca2+のホメオスタシスの維持に深く関与していることが示されている.今回我々は,マウス顎下腺におけるSMP30の局在を抗SMP30抗体による酵素抗体法を用いて検索し,さらにSMP30ノックアウト•マウスの顎下腺をワイルドタイプと比較しながら光学顕顕微鏡ならびに透過型電子顕微鏡下に観察した.その結果,抗SMP30抗体陽性部位は特に導管(顆粒管•腺条部)の上皮細胞で,その他終末腺房細胞にも発現がみられた.SMP30ノックアウト•マウスではSMP30の発現がみられた部位のミトコンドリアに膨化が認められた.
  • 高橋 佳文, 澤田 亜也子, 森 靖子, 井脇 貴子, 川島 貴之, 宮崎 裕子, 角実 枝子, 三代 康雄, 久保 武
    2002 年 105 巻 9 号 p. 920-924
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    自覚的聴力検査が施行不可能な乳幼児の聴力診断には,聴性行動反応の観察と聴性脳幹反応聴力検査(ABR, Auditory Brainstem Response)に代表される他覚的聴力検査の組み合わせで総合的に判断することが重要である.その診断の正確性について検討を行った.大阪大学幼児難聴外来を平成2年から7年の問に受診し,補聴器が必要な難聴と診断,補聴器適合を行った上で長年経過観察できた乳幼児29名58耳を対象とした.成長に伴い,遊戯聴力検査,一般的な純音聴力検査と順次施行可能となるが,純音聴力検査が再現性ある結果として得られるようになった後の聴力を確定聴力とした.初診時に行った診断と,この確定聴力としての純音聴力検査を比較検討したところ,初診時に行った診断は補聴器適合に有用な正確性を有していた.クリック音を用いたABR検査で閾値が測定可能であった7名14耳ではそのABR検査閾値と,確定聴力の高音部は良く一致した.多くの場合高音漸減型の感音性難聴であり,ABR検査閾値は十分4分法聴力を推察させるものであった.ABR検査で無反応であった22名44耳は高音部の聴力が悪く,特に4000Hz,8000Hzはスケールアウトも多くみられたが,一方で低音部聴力が比較的良く残存しているものも多い.身体障害者認定診断の際には十分な留意が必要と思われた.22名のうち18名(82%)は身体障害者2級に該当する聴力であったが,4名(18%)は2級に該当する聴力ではなかった.また特殊な聴力型を呈した症例も2例あったが,聴性行動反応の観察や条件詮索反応聴力検査により,その聴力型を推察し,補聴器適合に役立てることが可能であった.
  • 足立 光朗, 古田 茂, 鈴木 慎也, 前田 太郎
    2002 年 105 巻 9 号 p. 925-930
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    平成11年5月から平成12年4月までの1年間に当院を受診した患者のうち,上顎洞X線陰影を認めた540例を対象に細菌学的検査(上顎洞穿刺による)を施行し,その成績につき検討した.
    1) 540例中313例に細菌が認められ,313例から528株を分離,528株中303株を副鼻腔炎起炎菌として分離•同定した.急性副鼻腔炎での分離菌はS. pneumoniaeが30.4%,H. influenzaeが27.7%と多く認められ,慢性副鼻腔炎での分離菌はS. pneumoniaeが16.0%,H. influenzaeが15.1%,S. epidermidisが12.6%と多く認められた.
    2) 分離されたS. aureusのうち,急性副鼻腔炎では11.1%,慢性副鼻腔炎では40.0%がMRSA,S. pneumoniaeのうち30.6%がPRSPであり,依然として多剤耐性菌の増加が認められた.
    3) ciclacillinは全体の64.7%に感受性があったのに比べcefpodoxime proxetil, cefiximeは各々全体の6.5%,2.4%に感受性があるのみで,感受性は極めて低かった.1,2)も考慮し上記検出菌の動向を踏まえた薬剤を選択し,我々は副鼻腔に対する穿刺•洗浄療法を補助治療手段として活用している.
  • 分類と開放方法について
    吉崎 智貴, 渡邉 昭仁
    2002 年 105 巻 9 号 p. 931-936
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    術後性上顎嚢胞に対する手術方法は上顎洞根本術に準じた経上顎法と鼻内より嚢胞を開放する鼻内法がある.今日では内視鏡下鼻内手術が広く普及し,術後性上顎嚢胞に対する第一選択の手術法となっている.術後性上顎嚢胞の分類も鼻内法を前提とした分類法が多く報告されている.
    鼻内法で行う場合は嚢胞の内側面がどこに接しているかが重要である.私たちは嚢胞の内側面が接している部位により4つに分類した.嚢胞の内側面が中鼻道に接したタイプを中鼻道型,下鼻道に接しているのを下道道型,中鼻道と下鼻道の両方に接しているのを鼻腔側壁型とした.嚢胞の内側面が鼻腔側壁に接しておらず,他の嚢胞に接して存在するのを連続型とした.手術では嚢胞をできるだけ大きく鼻腔に開放するように行った.特に連続型では嚢胞の位置を立体的に把握の上,内側に存在する嚢胞を開放し,内側の嚢胞を経由して外側の嚢胞を開放後,チューブを嚢胞から鼻腔へ留置した.29症例の45個の嚢胞はすべて鼻腔に開放することできた.現在までに開放された嚢胞は鼻腔に交通し,患者は閉鎖による症状を認めていない.
  • 志賀 清人, 舘田 勝, 西條 茂, 横山 純吉
    2002 年 105 巻 9 号 p. 937-940
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    epithelioid hemangioendotheliomaは極めてまれな血管原性の腫瘍で肺や肝に初発することが多いがその診断は困難であり,また頭頸部領域に初発することは非常にまれである.40歳男性が右咽頭痛を主訴として当科に入院した.前医での生検にて扁平上皮癌の診断を受けていたため中咽頭癌として摘出術を行ったが,術後に咳•喀痰•血痰などの症状が出現した.頭皮下にも腫瘍が出現し,その生検によりepithelioid hemangioendotheliomaの確定診断が得られた.4年前の肺の開放生検の標本を再検討すると同様の所見があり,その時点から肺に病変が存在していたことが明らかとなった.今回の症例は肺原発の腫瘍が右口蓋扁桃に転移を来したものと思われたが,急速に腫瘍の進行を来して不幸な転帰をたどった病理組織学的な検討と文献的な考察を加えて報告する.
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