抄録
睡眠時無呼吸症候群 (SAS) は, 生活習慣病や交通事故, 労働災害の危険因子とされており, また労働の中心である中高年の男性に多い疾患であることから, 職域でスクリーニングが行われることが望まれる. 今回我々は, 産業医に対しSASに対する意識や取り組みの現状についてのアンケート調査を行い, 職域でのSAS対策の現状と課題について検討を行った. 産業医学推進研究会に所属する産業医を対象とし, 電子メールにてアンケート依頼を送付し, web上に設けたアンケートページにて回答を得た. 199名にアンケート依頼を送付し, 51名からの回答があった. 「SASへの取り組みの必要性を感じているか」 との問いに対して, 94.1%が 「はい」 と答えた一方で, 健診でSASに関する質問を取り入れていると答えたのは23.5%で, パルスオキシメータを用いた在宅検査を行っていると答えたのは3.9%のみであった. 「スクリーニングの障害」 については, 予算, 人員, 適当な紹介先 (専門施設) の不足を挙げる回答が多かった. SASに対する産業医の意識は高いものの, 予算や人員不足などの問題から積極的に取り組んでいる企業はまだ少なく, 費用対効果, 時間対効果に優れたスクリーニング法の確立が望まれている. また, スクリーニングの普及には, 専門施設と企業や健診機関との連携に加え, SASと診断された従業員への適切な対応法についての指針も必要であると考えられた.