日本耳鼻咽喉科学会会報
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108 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 青柳 優
    2005 年 108 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2005/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    顔面神経麻痺の予後因子には, 治療法, 治療開始時期, 年齢, 合併症などもあるが, 最も大きな予後因子は (1) 原因疾患, (2) 障害部位と (3) 障害程度である. 予後には障害程度がもっとも強く関係するが, 治療法の選択という観点から考えても, 原因疾患の診断が最も重要である. なかでもBell麻痺とHunt症候群 (zoster sine herpete) の鑑別は重要であるが, PCR法などを駆使してもすべての症例に対して初診時に正確な診断を下すことは, 現在のところ難しい.
    障害程度の診断に用いられる検査法には, 顔面運動採点 (40点法), 神経興奮性検査 (NET), electroneurography (ENoG), 磁気刺激誘発筋電図検査 (TMS), アブミ骨筋反射 (SR) があるが, NETとENoGは発症3日以内では診断的意義に乏しい. 予後良好 (2カ月以内に治癒) と判定するときの敏感度と特異度について発症3日以内の検査所見と147症例の転帰により計算すると, どの検査によっても単独では発症3日以内には100%正確な予後診断は出来ない. しかし, 発症3日以内に (1) 顔面運動採点が10点以上, (2) TMSで反応あり, (3) SRで反応あり, の検査所見がそろえば予後良好と判定できる. また, 逆行性顔面神経誘発電位により発症3日以内に予後を正確に診断できる可能性はある.
  • 岸部 幹, 斎藤 滋, 原渕 保明
    2005 年 108 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2005/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼻骨骨折は, 顔面骨骨折のうち最も頻度の高いものであり, 一般および救急外来でよく遭遇する疾患のひとつである. 鼻骨骨折は, 骨折による偏位がある場合や, 鼻閉や嗅裂の狭窄により嗅覚障害が惹起される可能性がある場合に整復する必要がある. しかし, 整復の成否については, 客観的に判断していない症例が多いと思われる. この理由として, 救急外来受診者が多いこと, 骨折の診断で単純X線検査やCTを使用した場合の被曝への配慮などが考えられる. しかし, 小さな偏位を見逃す例, 後に鼻閉や嗅覚障害を来す例もあり, 整復の成否について確かめる必要がある. 当科では徒手的整復を行う際に, 整復の成否を被曝のない超音波検査装置 (エコー) にて判定し有用な結果を得ている. その方法として, 特別な用具等はいらず, 鼻背にエコーゼリーを塗りプローブを置くだけで鼻骨を描出できている. これにより, real timeに鼻骨を描出しながらの整復が可能であった. また, 腫脹が強い場合は, 外見上, 整復がなされたか判定できないとして, 腫脹が消退するのを待ってから整復を施行する症例もあるが, エコーを用いれば腫脹が強い時でも整復が可能である. また, CTとほぼ同様にエコーでも鼻骨の輪郭が描出されることを考えると, その診断にも用いることが可能と考える. 以上から, エコーは診断から治療判定, 再偏位の検出といった鼻骨骨折診療の一連の流れに有用であり, 特に整復時の指標については, 現在のところ客観的にreal timeに判定できる機器はエコーのみであり, これを整復時に用いることは特に有用と考えられた.
  • 呉 孟達, 木村 勝, 楠見 妙子, 田口 亜以子, 中山 明峰, 稲福 繁
    2005 年 108 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2005/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) および単純性鼾症それぞれ1例ずつの臨床治験例に対して, 優れた口腔粘膜の収縮減量作用を持つエタノールに強力な抗炎症作用を持つステロイドを配合した, いわゆるE/S配合剤による “粘膜下薬物E/S注入法” を考案して過長な口蓋垂粘膜におけるアブレーション効果について検討した.
    治療前と比べてOSASの症例においては, 口蓋垂長が15mmから10mm, いびき音のVASが10から4, 呼吸障害指数のAHIが35.2から26.1にまで改善された. 単純性鼾症例では, 口蓋垂長が11mmから8.5mm, VASが7から2にまで改善した. 本法を用いることにより, 局所粘膜における開放性術創の形成や必要以上の粘膜形態の変形や崩壊などをほとんど来さずに, ごく自然な形で局所粘膜の収縮減量を実現することができるので, 高い臨床応用価値を潜めていると考えられる.
  • 北村 拓朗, 吉田 雅文, 森本 泰夫, 成井 浩司, 津田 徹, 菊地 央, 鈴木 秀明
    2005 年 108 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2005/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群 (SAS) は, 生活習慣病や交通事故, 労働災害の危険因子とされており, また労働の中心である中高年の男性に多い疾患であることから, 職域でスクリーニングが行われることが望まれる. 今回我々は, 産業医に対しSASに対する意識や取り組みの現状についてのアンケート調査を行い, 職域でのSAS対策の現状と課題について検討を行った. 産業医学推進研究会に所属する産業医を対象とし, 電子メールにてアンケート依頼を送付し, web上に設けたアンケートページにて回答を得た. 199名にアンケート依頼を送付し, 51名からの回答があった. 「SASへの取り組みの必要性を感じているか」 との問いに対して, 94.1%が 「はい」 と答えた一方で, 健診でSASに関する質問を取り入れていると答えたのは23.5%で, パルスオキシメータを用いた在宅検査を行っていると答えたのは3.9%のみであった. 「スクリーニングの障害」 については, 予算, 人員, 適当な紹介先 (専門施設) の不足を挙げる回答が多かった. SASに対する産業医の意識は高いものの, 予算や人員不足などの問題から積極的に取り組んでいる企業はまだ少なく, 費用対効果, 時間対効果に優れたスクリーニング法の確立が望まれている. また, スクリーニングの普及には, 専門施設と企業や健診機関との連携に加え, SASと診断された従業員への適切な対応法についての指針も必要であると考えられた.
  • 須田 佳人, 花牟礼 豊, 笠野 藤彦, 鹿島 直子
    2005 年 108 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2005/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    我々は甲状舌管を伴わないオトガイ下部の異所性甲状腺癌を経験した. 症例は32歳男性でオトガイ下部腫瘤を主訴に受診した. オトガイ下部に可動性良好, 境界明瞭な腫瘤を触知し, 固有位置の甲状腺には異常を認めなかった. 腫瘤の穿刺吸引細胞診においてclass 4甲状腺乳頭癌の疑いであった. 腫瘍摘出術を行い, 病理組織は乳頭癌であった. 組織断端陽性であったため再手術ではSistrunk法を行った. 甲状舌管を伴わない異所性甲状腺癌は, われわれが渉猟し得た限りでは自験例を含め45例であり, そのほとんどは舌根部発生であり, オトガイ下部発生例は2例のみであった. 今回の症例の診断において穿刺吸引細胞診が有用であった.
  • 杉田 玄, 鶴井 博理, 藤森 正登, 榎本 冬樹, 池田 勝久, 東 みゆき, 広瀬 幸子
    2005 年 108 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2005/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 細胞間相互作用を介した免疫制御に係わる新規共刺激分子ならびにそのレセブター分子の存在が報告され, これらには免疫細胞の活性化のみでなく, 活性化の抑制にも働いていることが明らかになってきている. 今回は口蓋扁桃におけるこれらの新規分子の発現を組織学的, 細胞学的に解析し, 発現細胞の同定とその分布を明らかにすることを目的とした.
    (方法) 当教室において手術的に摘出された睡眠時無呼吸症候群および習慣性扁桃炎の口蓋扁桃を用い, 免疫蛍光抗体法を用いた組織学的解析, ならびにflow cytometryを用いた細胞学的解析を行った.
    (結果) 細胞活性化抑制に働く新規共刺激分子PD-L1は二次リンパ濾胞胚中心樹状細胞GCDCおよび濾胞樹状細胞FDCの両方に発現していた. また, 新規活性化レセブター分子ICOSおよび抑制性レセプターPD-1は胚中心内の特にlight zoneに存在する活性化CD4陽性T細胞上に強く発現していた. 活性化分子である4-1BB分子は口蓋扁桃においては, T細胞には発現せず, 濾胞樹状細胞に発現が認められた.
    (結論) PD-L1は胚中心のGCDCおよびFDCの両方に発現しており, これら両細胞系は従来知られていたT細胞の活性化のみでなく, 抑制にも作用していると推定された. T細胞の活性化に係わるICOSならびに活性の抑制に係わるPD-1が, light zoneに存在する活性化T細胞上に同時に発現しており, これらの発現レベル, 頻度が症例によって異なることから, 今後, これらの発現程度とT細胞機能との関連の解析が重要であると考えられた.
  • 鼓膜切開, 換気チューブ留置術
    宇野 芳史
    2005 年 108 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2005/01/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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