日本耳鼻咽喉科学会会報
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自然発症した披裂軟骨脱臼症の1例
三枝 英人野中 康弘池園 哲郎愛野 威一郎岩崎 智治粉川 隆行中村 毅八木 聰明
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2005 年 108 巻 2 号 p. 164-167

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抄録

過去に報告された披裂軟骨脱臼症は気管内挿管などの気道確保後や喉頭外傷後に発症したものであり, 肩関節習慣性脱臼のように外傷の既往がなく自然発症したという報告は皆無である. 今回, われわれは自然発症した後方型披裂軟骨脱臼症例を経験したので報告する. 症例は53歳男性で, 数カ月前から突然失声に陥り, 数分で正常に戻るということを繰り返していた. 今回も突然誘因なく失声状態に陥ったが, 回復が認められなかったため当科を紹介され受診した. 喉頭内視鏡所見では, 左側声帯突起が外後方へ変位し, 声帯全体が前後に緊張し, 幅が減少しており, 発声時には声帯のレベル差が著明で高度の声門閉鎖不全を呈していることが確認された, 発声時のX線透視所見では左側声帯と披裂軟骨上部構造の異常運動性が確認され, 輪状披裂関節の触診で患側の腫脹と圧痛を認めた. なお, 内喉頭筋の筋電図の結果から反回神経麻痺は否定された. 以上のことから, 自然発症の後方型披裂軟骨脱臼症と診断した. 治療は, 通常の徒手整復術では不完全であったが, 患側梨状陥凹を経由して頸部食道内に挿入されたバルーンを引き抜きつつ, 喉頭を外方から圧迫することで徒手的に整復することができた.

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