日本耳鼻咽喉科学会会報
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若年性鼻咽腔血管線維腫における病期分類別手術法の検討
花牟礼 豊田中 紀充川畑 隆之笠野 藤彦鹿島 直子
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2005 年 108 巻 5 号 p. 513-521

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抄録

若年性鼻咽腔血管線維腫は, 顔面深部に生じ, 翼口蓋窩, 側頭下窩, 中頭蓋底などに進展する場合があり, 治療に苦慮することが多い. 本邦では, 各施設での症例が少ないため, 病期分類別の手術法について詳細に検討した報告はない. われわれは, 最近経験した4例 (Radkowski病期III A, 病期IA, 病期II C, 病期IBの各1例) を検討すると共に, 1990年~2003年に本邦で論文として報告された症例を検証し, 自験例を含めて合計35症例について, 病期分類別の手術法について検討した. 対象症例は, 病期IAが17例 (48.6%), IBが2例 (5.7%), IIAは4例 (11.4%), IIC9例 (25.7%), IIIAは3例 (8.6%) であった. 手術法は, 経口蓋法11例 (31.4%), 経上顎洞法9例 (25.7%) であり, 他に経鼻手術, Midfacial degloving法, Le Fort I型骨切術などがあった. 病期IA, Bにおいては1例で再発が見られた (再発率: 5%). 病期IIA, B, Cにおいては, 5例に再発を認め (再発率: 38%), 特に経口蓋法4例の全例で再発を認めた. 病期IIIA症例は, 1例で再発を認めた (再発率33%). 本疾患の手術治療においては, 腫瘍の進展範囲を正確に評価し, 病期分類に基づき, 腫瘍の進展範囲に十分アプローチ可能で出血のコントロールが可能な手術法, なおかつ, 成長過程の年齢であることを考慮した, より低侵襲の手術方法を選択すべきであると考えられた.

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