日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
故田中文男岡山大学名誉教授の側頭骨病理組織所見
高原 滋夫小西 静雄斎藤 竜介黒住 静之
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 77 巻 11 号 p. 905-907

詳細
抄録

故田中文男岡山大学名誉教授の側頭骨病理所見をご生前の臨床所見と対比して報告した.同教授はわが国における内耳病理研究の先達の一人で1あり,近年わが国でも米国にならつてTemporal Bone Banks Programが具体化しようとしており,この報告が一つのmodelcaseとしての役割を果せればと考えた.
臨床的には昭和17年満59才の時右耳に突発性難聴を思わせる急激な聴力損失をきたし,以後右耳鳴,歩行時軽度の左偏倚をきたすようになつた.摘出された側頭骨に見られる最も顕著な病理学的変化は右耳の球形嚢の著明な拡張である.球形嚢膜は前庭骨壁,アブミ骨板と癒着像を示し,明らかに生前の変化と考えられる.その他,両耳とも基底回転部でラセン神経節細胞および神経線維の消失,減少,不規則な血管条の萎縮,内耳道内動脈の動脈硬化像など,側頭骨全域にわたり,高度の老人性変化を認めた.以上より特発性内リンパ水腫症例であると考察した.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
次の記事
feedback
Top