日本耳鼻咽喉科学会会報
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実験的滲出性中耳炎の病態についての研究
平出 文久
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1974 年 77 巻 11 号 p. 907-916

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抄録

目的:滲出性中耳炎の際の中耳腔内貯留液の生化学的性状血清に非常こ類似していることに着目し,また滲出性中耳炎の遷延型と考えられるコレステリン肉芽腫のコレステリンは血液(赤血球および血漿)由来であろうと考えた.そこで実験的に動物の耳管を閉塞し中耳粘膜血管の透過性の充進と中耳液産生の状態,また中耳液貯留とコレスラリン肉芽腫形成との関係を形態学的に実証しようと試みた.
方法:モルモット,リスザルの軟口蓋に縦切開を入れ,耳管咽頭入口部を露出させ,ここに数ケのsilastic spongeの小片をつめて耳管を完全に閉塞した.Majnoらのvascular labeling法を用い中耳粘膜血管の透過性の亢進状態をその時採取した中耳貯留液の性状とあわせて経時的に観察した.また耳管閉塞後比較的長期間にわたり中耳内病変を病理組織学的,組織化学的に観察した.
結果:実験的滲出性中耳炎の際の中耳腔内貯留液は中耳粘膜血管の透過性が異常に亢進した結果血管外に流出した血漿が大部分であり,慢性期になると中耳腔内に流出した血液由来のコレステリンが源となつてコレステリン肉芽腫の形成をみることが判明した.

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