日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
不規則視標運動によるsmooth pursuitおよびsaccadeの研究
高橋 正紘釣巻 周子辻田 直美秋山 育代
著者情報
キーワード: 不規則運動
ジャーナル フリー

1987 年 90 巻 4 号 p. 568-576

詳細
抄録

周期の不規則な定速度往復運動(20,40,60°/sec)における正常者の追従眼球運動を分析し,smooth pursuitおよびsaccadeについて以下の結論を得た.
1. 視標方向変化直後のsmooth pursuitゲインは,変化前の運動持続の短縮に伴い減少した.1.0のゲイン値を得るための変化前の運動持続は,20°/secの場合約1.0秒であったが,視標速度の増加に伴い延長傾向を示した.
2. 視標方向変化後の追従速度の増加(眼球加速)は,変化前の運動持続が短い程長時間抑制された.変化後の運動持続の延長によるゲイン値の増大は,20°/secにおいては明らかでなく,40,60°/secで認められたことから,加速時間の差によるものと考えられる.
3. 著明なhysteresisおよび不規則要素に対する予測的眼球運動は,smooth pursuit systemのモデルとしてretinal error velocityを入力する連続的制御系(velocity servomechanism)よりもperceptionを入力とし(perception feedback mechanism)予測的制御機構を備えた系といえる.
4. 視標方向変化後のsaccade反応時間(200msec)は速度に影響されなかった.反応時間の後半120msecは入力されなかったが,不適切なsaccadeに対しては解発前に第二のsaccadeが平行してプログラムされた.このため,130msecより短い潜伏時間のsaccadeの出現率は速度の増加と共に増大した.
5. saccade振幅の分布域は視標速度の増加に比例して増大した.視標速度の変化直後あるいは追従速度の変動直後にはsaccade振幅の精度が著しく低下することから,ramp刺激におけるsaccadeプログラムはposition errorの時間的変動の大きさのみを入力とし,smooth pursuit systemから入力を得ていないといえる.

著者関連情報
© 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top