日本耳鼻咽喉科学会会報
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慢性副鼻腔炎における嗅覚障害
臨床的, 組織形態学的検討
江川 雅彦
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1995 年 98 巻 5 号 p. 843-854,929

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抄録

実験的副鼻腔炎家兎における嗅上皮と呼吸上皮の組織障害とその治癒過程をHE染色, SEM, 抗BrdU抗体染色にて観察した. その結果, 治癒遅延の過程における嗅上皮への炎症の波及と嗅上皮の細胞分裂能が呼吸上皮より劣ることなどが明らかとなった. これらの所見は副鼻腔炎で見られる嗅覚障害が呼吸性とともに嗅上皮性障害を示すことを示唆した. 一方, 慢性副鼻腔炎で嗅覚障害を認める患者におけるニオイ紙による嗅覚識別検査と嗅覚閾値検査成績では他の鼻疾患のそれらと比較して嗅覚障害は重症化の傾向が見られ, 呼吸性とともに嗅上皮性障害の存在が考えられた. また副鼻腔炎で嗅覚障害を訴える患者の嗅上皮生検は臨床診断上有用であった.

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