痙攣性発声障害は, 喉頭に器質的異常や運動麻痺を認めず, 発声時に内喉頭筋の不随意的, 断続的な痙攣による発声障害を来す疾患であり, 国内外ともに内転型痙攣性発声障害に対する根本的な治療はない. チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型は, 発声時に不随意的, 断続的に強く内喉頭筋が内転することで声門が過閉鎖し症状が発現することに着目し, 発声時に声門が強く内転しても声帯が強く閉まらないように甲状軟骨を正中に切開し, 両側甲状披裂筋の付着部を甲状軟骨ごと外側に広げて固定する手術術式であり, 一色らにより報告された.
本治療の有効性により患者の QOL 向上に寄与し, 標準治療になり得るものと考え, 2014年より難治性疾患等克服研究事業の支援を受けて実用化に向けた研究を行い, チタンブリッジは2017年に薬機承認され, 2018年にはチタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型 (喉頭形成術: 甲状軟骨固定用器具を用いたもの) が保険収載された.
本稿では, チタンブリッジ実用化ための開発戦略の立案, 企業リエゾンと医師主導治験資金の獲得, 医師主導治験の準備と結果, 先駆け審査制度指定および保険収載に向けた戦略立案を紹介した.
アカデミア主体の医療機器開発を成功させるためには, 疾患克服のための強い意志と強力な ARO 支援および関連学会の支援が必要であると考えられた.