日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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総説
形成外科の進歩とリーダー育成
小川 令
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2022 年 125 巻 7 号 p. 1067-1070

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抄録

 広義の形成外科には, 狭義の「形成外科」・「再建外科」・「美容外科」が含まれる. 患者が病院を訪れる理由が異なる3科が, 広義の形成外科としてまとまって診療を行っているのは, マイナスからプラスまで整容・機能の獲得を目的とする「理念」そして「手術手技」が共通だからである. 形成外科は紀元前600年ごろに活躍したとされるインドの医師ススルタによる鼻再建から始まると考えられている. 形成外科は耳鼻科と共に発展してきたといっても過言ではない. 1900年代の半ばから発達したマイクロサージャリーの技術は, その後の形成外科の急速な発展に寄与した. 現在では免疫抑制剤を使用した上で他人から顔を移植することもできるようになった. しかし形成外科の究極の目標は, 失われた臓器や組織を再生させる再生医療であろう. ただし iPS 細胞が開発された現在でも, 体外で臓器や組織を再生するのは困難である. その理由の1つが, われわれが地球上で生活している際に意識せずに影響を受けている物理的刺激である. このメカニズムを研究するメカノバイオロジーの理解は, 創傷治癒や再生医療に必須であり, 物理的刺激をコントロールする医療をメカノセラピーという. すでに臨床では, 物理的刺激を加えて創傷治癒を促進する器機や, 物理的刺激をコントロールして目立たない傷あとにするための手術が行われている. このようなメカノセラピーを担っているのも形成外科医であり, これからの創傷治療や再生医療への貢献が期待される.

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© 2022 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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