情報通信政策研究
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調査研究ノート(査読付)
匿名加工されたデータの利活用に向けた課題
黒政 敦史
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2020 年 3 巻 2 号 p. 171-194

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抄録

令和元年6月14日「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が公表された。個人の社会生活の中に深くデジタル技術、ネットワーク技術が入り込んだデジタル社会において、社会課題の解決にはデータの利活用が重要な役割を果たすことが示されている。

データ利活用のためにデータ流通が必要であり、データ流通政策においてデータの類型と規律整備が重要な役割を担っている。データ流通環境整備検討会において、データは、①個人情報を含むデータ、②匿名加工されたデータ及び③個人に関わらないデータの3つに大別している。

匿名加工されたデータは、元の個人データの有用性を高いレベルで維持しながら、個人の権利利益を守ることができるデータ類型と期待されていた。民間においては平成29年個人情報保護法の改正により「匿名加工情報」が導入され、事業者が一定の条件の下で個人情報を基準に基づいて加工すると本人同意不要の第三者提供や目的外利用が行えるようになった。国の機関や独立行政法人等の公的部門においても「非識別加工情報」が導入されたが官から民へのデータ提供手段の一つとしてスモールスタートという必要最低限の規律を整備し、地方公共団体において非識別加工情報の導入は平成29年度5団体にとどまっている。

現状、匿名加工データの制度は民間事業者がパーソナルデータの収集、データ流通、集約、加工、第三者提供を行う一連の利活用を念頭に整備されている。一方、公的部門における匿名加工データの利活用制度の整理は棚上げされた状況にあり、民間事業者と公的部門の間で匿名加工情報を共有、利活用するケースにおいて課題整理と対応策のコンセンサス形成が重要と考える。特に国立大学や研究機関などが民間事業者との共同研究や共同事業のため民間事業者から匿名加工情報を受け取った場合の取扱と、公的部門内部における取扱、さらに民間事業者への提供までの整理検討が必要と考える。

本稿では、民間事業者における匿名加工情報および非識別加工情報の利活用制度を確認し、公的部門における匿名加工情報の取扱について課題整理を行う。

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© 2020 総務省情報通信政策研究所
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