情報通信政策研究
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調査研究ノート(査読付)
消費者による情報銀行への評価決定要因の実証分析
山口 真一谷原 吏大島 英隆渡辺 智暁菊地 映輝庄司 昌彦高口 鉄平
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2020 年 4 巻 1 号 p. 125-144

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抄録

近年、データ利活用による経済効果や、社会課題の解決が注目されている。他方、パーソナルデータの漏洩や悪用といった、消費者にとってのリスクも指摘されている。このようなデータ利活用に関する諸課題を解決し、データ流通・利活用を促進するための施策の1つに、情報銀行がある。情報銀行とは、データ提供者とデータ利用者を仲介する組織であり、個人がデータを管理すると共に、個人の指示や指定した条件に基づいてデータを第三者に提供することができる組織である。内閣官房や総務省、経済産業省が中心となり、本組織の利用を推進している。

しかしながら、このようなサービスは国内外で未だ黎明期を脱しておらず、普及が進んでいないという現状がある。その要因の1つとして、消費者側の「不安」や「便益が実感できない」という大きな課題が指摘されている。

そこで本研究では、消費者の情報銀行への評価の決定要因を定量的に検証し、今後情報銀行の普及を促進し、データ流通・利活用を加速させるための施策を検討する。分析に当たっては、分析対象とした10分野10アプリのいずれか1つ以上を利用している、2,200名分のアンケート調査データを回帰分析した。

分析の結果、次の4つが明らかになった。第一に、男性であれば情報銀行にポジティブな傾向で、年齢が上がると情報銀行にネガティブな傾向であり、特に年齢の影響が大きい。第二に、インターネットリテラシー、データリテラシー、データ収集認知率は、どれも情報銀行への評価を高めてポジティブな態度にする。第三に、総合的な情報銀行より、特定の分野のデータに特化した情報銀行の方が、ニーズが高い。第四に、情報銀行を使ってみたい理由としては「より便利なサービスを受けられそうだから」という便益を期待するものが多く、使いたくない理由としては、「自分のデータが漏洩(流出)するリスクが高まりそうだから」等のデータの悪用や流出、プライバシー侵害懸念が多かった。

以上の結果から、次の2つの政策的含意が導かれる。第一に、受け入れられやすい対象(消費者)や、受け入れられやすいデータにフォーカスして展開することが、情報銀行の普及促進に繋がる。第二に、インターネットやデータに関するリテラシー教育を充実させることが、情報銀行の普及促進に繋がる。

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© 2020 総務省情報通信政策研究所
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