情報通信政策研究
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立案担当者解説
外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方
小杉 裕二渡部 祐太
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2021 年 5 巻 1 号 p. 219-222

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Abstract

令和2年5月22日に公布された「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」では、外国法人等が電気通信事業を営む場合の規定の整備等が行われ、当該整備に係る改正ついては、令和3年4月1日に施行された。

総務省では、改正法の施行に当たり、関係省令を改正するとともに「外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方」を策定・公表した。

「外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方」では、①外国法人等が、日本国内において電気通信役務を提供する電気通信事業を営む場合、②外国から日本国内にある者に対して電気通信役務を提供する電気通信事業を営む場合に適用されるとしているほか、登録・届出の手続及び国内代表者等の指定その他の電気通信事業法の規律の適用について明らかにしている。

1.はじめに

令和2年5月22日に公布された電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第30号。以下「改正法」という。)では、外国法人等(外国の法人及び団体並びに外国に住所を有する個人をいう。以下同じ。)が電気通信事業を営む場合の規定の整備等が行われ、当該整備に係る改正ついては、令和3年4月1日に施行された。

総務省では、改正法の施行に当たり、電気通信事業法施行規則等の関係省令を改正するとともに「外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方」(以下、「適用に関する考え方」という。)を策定した(令和3年2月12日)。

本稿では、適用に関する考え方に即して、外国法人等に対する新たな規律の背景や概要について、改正法や関係省令で規定した内容も含めて解説することとしたい。なお、本稿中意見にわたる部分は筆者らの個人的見解であることを予めお断りしておきたい。

2.1.「外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方」の策定等

改正法の施行により、外国法人等が国内向けに電気通信事業を営む場合、国内代表者等の指定などの規律が新たに適用されるが、加えて、電気通信事業法(以下、「事業法」という。)の他の規律及び関係ガイドラインについても遵守する必要がある。これらについて、利用者利益の確保に資するよう、事業法の適用対象となり得る外国法人等の理解を促すため、総務省では、事業法が適用される基準や規律の内容を総括的に示す観点で、本適用に関する考え方を策定したものである。概要は次のとおりである。

2.1.2.電気通信事業法の適用対象になると判断され得る国内向けサービスの基準

事業法は、①外国法人等が、日本国内において電気通信役務を提供する電気通信事業を営む場合のほか、②外国から日本国内にある者に対して電気通信役務を提供する電気通信事業を営む場合に適用される。適用に関する考え方は、この②に関して、外国法人等がどのように国内サービスを提供した場合に、事業法が適用されると判断され得るかを示したものである。

これについては、国内向けにサービスを提供する意図を有していることが明らかであるかを基準とし、提供の意図を有していることが明らかであると判断され得る要素としては、客観的な外形的事実から意図を推認できることが適当と考え、(1)サービス提供の言語(サービスを日本語で提供していること)1、(2)決済通貨(有料サービスの決済通貨に日本円があること)、(3)国内向けの販売促進行為の有無(国内におけるサービスの利用について、広告や販売促進等の行為2を行っていること)を例に挙げている。ただし、実際に国内向けサービスに該当するか否かは、個別具体的な事例に即して判断する必要があることから、これらの事例は国内向けサービスに該当すると判断され得る例示として記載しているものである。

2.1.3. 電気通信事業の登録又は届出

外国法人等が、2.1.2で述べた電気通信事業を営もうとする場合は、事業法の規定に基づき、登録(第9条)又は届出(第16条第1項)が必要(第164条第1項各号に掲げる電気通信事業を営む場合を除く。)となる3。なお、電気通信回線設備を日本国内に設置することなく電気通信事業を営む場合については、登録ではなく届出を要する電気通信事業となる。

2.1.4.国内代表者等の指定

外国法人等は、2.1.3.の登録又は届出を行う際は、国内における代表者又は国内における代理人(以下「国内代表者等」という。)を定めて総務大臣に提出しなければならず、具体的には、国内代表者等の氏名又は名称、国内の住所、電話番号及びメールアドレスを記載することしている。

また、国内代表者等は、事業法に基づき総務大臣が行う行政処分に係る通知等を、外国法人等を代理して受領する権限を有しなければならず、外国法人等が国内代表者等に当該権限を付したことを証する書類を提出することとしている。

これに加えて、国内代表者等には、総務省と外国法人等との間におけるコンタクトポイントとなることも期待しており、適時適切に連絡等を行うことで、事業法の規律の適切な理解・遵守を通じて利用者の利益の保護等を図ることとしている。

2.1.5.適用される事業法の具体的な規律

外国法人等に適用される事業法の具体的な規律については、2.1.4の国内代表者等の指定を除き、原則として同種の電気通信役務を提供する電気通信事業を営む内国法人等と同一である。設置する設備や提供するサービスによって規律は異なるが、主な規律は以下のとおりである4

秘密の保護5(第4条)、利用の公平(第6条)、電気通信事業の届出(第16条)、事業の休止及び廃止並びに法人の解散(第18条)、電気通信業務の休止及び廃止の周知6(第26条の4)、業務の停止等の報告7(第28条)、業務の改善命令8(第29条)、報告及び検査(第166条)、法令等違反行為を行った者の氏名等の公表(第167条の2)

2.1.6. 事業法違反の場合の公表制度

事業法第167条の2では、法令等違反行為(事業法又は事業法に基づく命令若しくは処分に違反する行為をいう。以下同じ。)を行った者の氏名等を公表することができる制度を新たに設けており、インターネットの利用その他適切な方法で公表することとしている。また、氏名等を公表する際には、あらかじめ当該法令等違反行為を行った者又は国内代表者等にその旨を通知した上で、意見を述べる機会を付与することとしている(利用者保護等の観点から、緊急に公表が必要な場合等を除く。)。

法令等違反行為を行った者が外国法人等である場合9など、当該法令等違反行為を行った者がその是正を行うことなく事業が継続されると、その間利用者への被害が拡大する可能性や、電気通信の安全性及び信頼性等が確保されない可能性があることから、利用者が適切な情報に基づき適切な事業者を選択できる環境を整えるため、新たに公表制度を設けたものである。

3.おわりに

本稿は、外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方に即して、外国法人等に対する新たな規律の背景や概要について、改正法や関係省令で規定した内容も含めて解説してきた。今後、本稿が、外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する理解の一助になれば幸いである。

Footnotes

1 例えば、サービス利用時に表示される言語が日本語である場合のほか、日本語で契約書類・約款等が提供されている場合、ユーザへのサポートを日本語で提供している場合等が該当する。

2 例えば、日本国内におけるサービスの利用に関する、ウェブメディア・テレビCM・新聞・雑誌等のメディアへの掲載のほか、広告物(チラシ、パンフレット等)の配布、DM(メールマガジン)の送信等の行為(代理店等を通じ、間接的に広告や販売促進等の行為を実施している場合を含む。) が該当する。

3 登録又は届出の要否や具体的事例については、「電気通信事業参入マニュアル」及び「電気通信事業参入マニュアル[追補版]」を参照。

4 これらは、日本国内に電気通信回線設備を設置することなく外国から電子メールや利用者間のメッセージの媒介に係る電気通信役務を提供する場合の主な規律である。

5 具体的な基準については、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」及び「同意取得の在り方に関する参照文書」を参照。

6 具体的な基準については、「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」を参照。

7 具体的な基準については、「電気通信事故に係る電気通信事業法関係法令の適用に関するガイドライン」を参照。

8 具体的な基準については、「通信の秘密の確保に支障があるときの業務の改善命令の発動に係る指針」を参照。

9 本公表制度は、国内法人等にも適用される。

 
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