情報通信政策研究
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立案担当者解説
放送法の一部を改正する法律
岩坪 昌一隅田 昂平
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2024 年 8 巻 1 号 p. 123-134

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抄録

第213回通常国会において成立した放送法の一部を改正する法律(令和6年法律第36号)は、日本放送協会(以下「協会」という。)の放送番組を放送の受信設備を設置しない者に対しても継続的かつ安定的に提供するため、①インターネットを通じて放送番組及び番組関連情報(以下「放送番組等」という。)の配信を行う業務を協会の必須業務とするとともに、②民間放送事業者が行う放送の難視聴解消措置に対する協会の協力義務を強化する等の措置を講ずるものである。

①については、協会の放送番組を放送の受信設備を設置しない者に対しても継続的かつ安定的に提供するため、原則として全ての放送番組について、同時配信を行うこと及び見逃し配信を行うことを協会の必須業務とするとともに、協会の放送番組の内容がその視聴の環境に適した形態で提供されることに対する公衆の要望等を満たすため、放送番組の全部又は一部について、番組関連情報(協会が放送する又は放送した放送番組の内容と密接な関連を有する内容の情報であって、当該放送番組の編集上必要な資料により構成されるもの)の配信を行うことを協会の必須業務とする。

また、協会が番組関連情報の配信を行う業務を自らの判断と責任において適正に遂行するため、協会に対して下記(1)~(3)の各要件に適合する業務規程の策定、公表等を義務付けるとともに、その実施状況を定期的に評価すること等を義務付ける。

(1)公衆の要望を満たすために必要かつ十分なものであること

(2)公衆の生命又は身体の安全の確保のために必要な情報が迅速かつ確実に提供されることが確保されるものであること

(3)他の放送事業者等が実施する配信の事業等における公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであること

さらに、受信料の公平負担を確保するため、国内基幹放送のテレビジョン放送の受信設備を設置した者と同等の受信環境にある者として、協会が必須業務として行う放送番組等の配信の受信を開始した者を協会との受信契約の締結義務の対象とする。

②については、協会が放送全体の発展に貢献するプラットフォームとしての役割を果たす観点から、民間放送事業者の講じる放送の難視聴解消措置の円滑な実施に必要な協力に係る協会の努力義務を義務に格上げするとともに、協会に対し、当該協力の具体的な内容に関する協議の求めがあった場合に当該協議に応じることを義務付ける。

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