2025 年 9 巻 2 号 p. 21-42
本稿は、急速に拡大するデジタルプラットフォーム事業(DPF事業)に対する日本の行政規制、とりわけ業規制の現状を、業規制のレイヤー構造の視点から整理・分析するものである。DPF事業の規制は、競争法や消費者法といった業横断的規制のみならず、住宅宿泊事業法、電気通信事業法、出会い系サイト規制法、特定DPF法、取引DPF法、情報流通プラットフォーム対処法、スマホソフトウェア競争促進法など、業規制として把握可能な立法によってもなされている(1)。コンテンツ・レイヤーの業規制は、財または役務の提供者のみならず、財または役務の取引の媒介を行う事業者にも課されることがある。特に住宅宿泊事業法は、民泊仲介サイトを利用者間の取引の媒介を行うものとして捉えており、取引の媒介という概念を実質的に拡張したようにも見える(2)。ネットワーク・レイヤーの業規制は、通信の媒介を行う事業者に課されるが、令和4年の電気通信事業法改正により、検索エンジンやSNSなど、通信の媒介を行わないものの、情報流通の媒介者として重要な役割を果たしている事業者にも及ぶこととなっている(3)。プラットフォーム・レイヤーの業規制は、DPF事業の特徴として、一方でコンテンツ・レイヤーの業規制と接する領域として利用者のマッチングに着目し、他方でネットワーク・レイヤーの業規制と接する領域として情報流通の媒介に着目して、行政規制をかけるものと理解できる。出会い系サイト規制法、特定DPF法・取引DPF法・スマホソフトウェア競争促進法、情報流通プラットフォーム対処法は、このような視点から、プラットフォーム・レイヤーの業規制を導入したものと理解することができる(4)。広告プラットフォーム、決済プラットフォーム、仕事仲介プラットフォーム、イノベーションプラットフォーム、データ共有型プラットフォームなどにも、さらなる分析の必要性が存在している(5)。
This paper organizes and analyzes the current state of Japan's administrative regulations for the rapidly expanding digital platform business (DPF business), from the perspective of the layered structure of sector-specific regulations. Regulation of DPF businesses is not only governed by cross-sectoral regulations like competition law and consumer law but also by sector-specific regulation, such as the Private Lodging Business Act, Telecommunications Business Act, and so on (1). Administrative regulations at the products layer may be imposed not only on providers of goods or services but also on businesses that mediate transactions involving such goods or services (2). Network layer regulations apply to operators mediating communications. However, the 2022 revision of the Telecommunications Business Act extended these regulations to operators like search engines and SNS platforms that do not mediate communications but play a role as spaces for communication among unspecified users (3). Regulatory oversight at the platform layer can be understood as imposing administrative regulation on DPF businesses. This regulation focuses on user matching as an area overlapping with products layer regulation, while also focusing on the information flow between users as an area overlapping with network layer regulation (4). Further analysis is also needed for advertising platforms, payment platforms, job intermediary platforms, innovation platforms, data-sharing platforms, and others (5).
デジタルプラットフォーム事業(以下「DPF事業」と呼ぶ)は、グローバルに急成長を遂げ、それに応じて、当該事業に対する法規制にも注目が集まるようになった2。DPF事業に対する法規制は、アメリカをはじめとする各国における競争法の展開や、EUにおける新規立法など、国際的に目まぐるしい展開を遂げてきており、日本の法制度もそれを意識しながら変遷してきた3。とりわけ近年は、DPF事業が国家権力に並ぶ、あるいはすでにそれを超えた「権力」であるとの認識の下、法制度による対応の必要性と限界が、これまで以上に深刻な問題として論じられるようになった4。本稿は、こうした議論の文脈を意識しつつ、そこで必ずしも正面から光が当てられてこなかった、DPF事業に対する日本の行政規制、その中でもとりわけ業規制に着目して、その現状を分析するものである。
1.1.DPF事業の行政規制事業に対する行政規制は、業規制と業横断的規制とに大別することができる5。業規制とは、一定の産業分野ないしは一定の事業をカテゴライズしてかけられる規制であり、業規制を規定する法令は「業法」と呼ばれることもある6。業横断的規制とは、産業分野を特定せず、ないしは事業一般に対して行政規制をかけるものであり、競争法、消費者法、情報法等の分野に例がみられる7。
DPF事業の規制に対しては業横断的規制がよく取りざたされるが、DPF事業の業規制と捉えることが可能な法律も多く存在している。2003年の出会い系サイト規制法8はその先駆けと目される。また、近時は、その種の新法ないし改正法が連続して成立している。2017年のいわゆる民泊新法9が、民泊仲介サイトを想定して住宅宿泊仲介業の規制を導入したことを皮きりに、DPF事業そのものを対象とした業規制として、2020年に特定DPF法ないし取引透明化法10が、2021年に取引DPF法11が制定された。さらに、検索エンジンやSNSに規律を及ぼすべく、2022年に電気通信事業法が改正され12、大規模SNS事業者によるインターネット上の違法・有害情報対策への行政対応を強化すべく、2024年に旧プロバイダ責任法を改称して情報流通プラットフォーム対処法とする改正がなされた13。さらに同年には、モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジンを提供する事業者について、セキュリティと競争環境とを両立させるべく、スマホソフトウェア競争促進法14が制定された。本稿は、こうした新規立法を業規制の文脈で捉え直すことで、DPF事業に対する業規制の意義を一段深堀することを試みる15。
1.2.業規制のレイヤー日本でDPF事業の規制の在り方がいち早く議論されたのは、おそらく通信・放送の分野においてである。そこでは、2000年代の初頭から、事業ないし事業者を、①端末、②ネットワーク、③プラットフォームおよび④コンテンツ&アプリケーション(以下単に「コンテンツ」という)の四つのレイヤーに区分する議論がなされてきた16。
これを参考にするならば、たとえば、オンライン・モール(③プラットフォーム・レイヤー)は、一方でインターネットに接続する端末(①端末レイヤー)、インターネット回線の敷設(インフラ網)およびそれを通じた通信サービス(サービス網)を提供する各種の事業(②ネットワーク・レイヤー)17を前提とし、他方でモールに出店する各種の事業者(④コンテンツ・レイヤー)に消費者との取引の場を提供していると言える18。このような区分は、オフラインのプラットフォームについても、少なくとも②~④については当てはまる19(→表1)。
以下では、こうした事業ないし事業者のレイヤー区分を前提に、④コンテンツ・レイヤーと②ネットワーク(サービス網)レイヤーに関わる業規制が③プラットフォーム・レイヤーの事業ないし事業者に及ぶ局面を整理したうえで(2.および3.)、③プラットフォーム・レイヤーの業規制の現状を概観し(4.)、今後の課題を示す(5.)。
| 卸売市場 | 金融商品市場 | オンラインモール | 動画共有プラットフォーム | ||
|---|---|---|---|---|---|
| ①端末レイヤー | 電話・スマートフォン・PC・タブレット | ||||
| ②ネットワーク(インフラ網)レイヤー | 交通インフラ(鉄道、道路、河川、港湾etc.)の敷設・整備 | 電話回線・インターネット回線の敷設・整備 | |||
| ②ネットワーク(サービス網)レイヤー | 貨物・旅客の輸送・運送 | 通信サービス | |||
| ③プラットフォーム・レイヤー | 卸売市場(卸売市場主) | 金融商品市場(金融商品取引所) | オンラインモール | 動画共有プラットフォーム | |
| ④コンテンツ・レイヤー | 生鮮食品等(卸売業者、仲卸業者) | 金融商品(金融商品取引業者) | 各種の商品 | 動画 | |
プラットフォームにおいて提供されるコンテンツの内容によっては、それを提供する事業者(プラットフォームの利用者の一方)に業規制がかかることがある。たとえば、オンラインモールに一般用医薬品を出品する事業者は、薬局開設者でない限り、医薬品の販売業の許可を取得する必要がある(薬機法24条1項)。これは、コンテンツ・レイヤーの業規制に位置付けられる。
こうしたコンテンツ・レイヤーの業規制の中には、事業者自らが商品ないし役務を利用者に提供する業態を規制するのみならず、事業者が第三者による商品ないし役務の提供を媒介する業態を規制するものも存在する。たとえば、宅建業法は、宅地建物取引業の定義に、「宅地若しくは建物……の売買若しくは交換」を業として行う者に加えて、「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは
したがって、DPF事業者自らがコンテンツを提供するわけではなくとも、利用者間でのコンテンツの取引の媒介を行うのであれば、こうした媒介に着目したコンテンツ・レイヤーの規制が、DPF事業者にも及びうる21。逆に言うと、利用者に情報を提供するのみであり、利用者間の取引の媒介ないし仲介を行わないDPF事業者には、コンテンツ・レイヤーの業規制は及ばない。たとえば、賃貸情報サイトや旅行予約サイトを運営する事業者は、利用者に情報を提供するのみであり、利用者間の媒介ないし仲介は行っておらず、それゆえに宅地建物取引業や旅行業に当たらず、これらの規制を受けないとされる22。
2.2.「媒介」概念の拡張――住宅宿泊事業法他方で、近時成立した住宅宿泊事業法は、いわゆる民泊サービスについて上記の構造を踏襲しつつ、取引の媒介に着目したコンテンツ・レイヤーの業規制の範囲を実質的に拡張したように見える。
住宅宿泊事業法は、民泊サービスを提供する事業を住宅宿泊事業として届出制の対象としつつ(同法2条3項、3条以下)、住宅宿泊事業者と宿泊者との間の宿泊サービスに関する契約の締結を媒介する事業を住宅宿泊仲介業として捕捉した(同法2条9項)。届出住宅への旅客の宿泊サービスの仲介を報酬を得て業として行うことは、「旅行業」の定義に該当する(旅行業法2条3号)ため、本来であれば旅行業の登録が必要である(同法3条)ところ、観光庁長官から住宅宿泊仲介業の登録を受けた者は、旅行業の登録を受けておらずとも、届出住宅への旅客の宿泊サービスの仲介を報酬を得て業として行うことが可能となる(住宅宿泊事業法46条1項)。このように、住宅宿泊仲介業は、旅行業者ではない者が民泊の仲介を業務として行うことを規制しており、コンテンツ・レイヤーの業規制の延長として、取引の媒介をするDPF事業を規制するものと言える23。
注目すべきは、いわゆる民泊仲介サイトが、住宅宿泊仲介業の登録を受けるべきものとして把握されている点である。実際に、Airbnbを初めとする民泊仲介サイトの運営事業者も、住宅宿泊仲介業の登録を受けており24、同法の解釈としては、民泊仲介サイトは契約の媒介を行っているものと整理されていることが伺われる25。そうだとすると、翻って、旅行予約サイトが契約の媒介を行っておらず、それが旅行業に当たらないという前提を見直す必要も生じているといえる26。
2.3.民事法の規律の補完ところで、他人間の取引の媒介を行う者は、民事ないし商事の仲立人(商法543条参照)として、一定の民事法上のルールに服することになる。仲立契約は準委任契約(民法656条)であり、仲立人は委託者に対して善管注意義務を負う(民法644条)。仲立人が委託者ではない媒介の相手方に対して何らかの義務を負うかに関しては、明文の規定はないが、商事仲立人(商法543条)ないし営業的商行為として仲立ちを行う民事仲立人(同502条11号)には、帳簿記載義務・交付義務(同547条)などの義務が課され、委託関係に無い相手方当事者に対しても報酬請求権を有する(同550条2項)ことなどから、当事者双方の利益を公平誠実に図る義務や、当事者間の紛争を防止するための義務があるものと解されている27。
そうすると、コンテンツ・レイヤーの業規制が、DPF事業者による取引の媒介を規制の対象とする(2.1.)ことには、民事法上の仲立人の義務を行政規制によって補完するという意義が認められる。逆に、民事法上、オンラインモールやオークションサイトが仲立人に該当するかどうかについて議論がある28ところ、民事法上の仲立人の義務の内容が行政規制をも踏まえて設定されるのだとすれば29、住宅宿泊事業法が「媒介」概念を拡張したように見える点(2.2.)は、DPF事業者の仲立人該当性という論点にも影響を及ぼす可能性があろう。
DPF事業は、その性質上、DPF事業者と利用者との間、場合によってはその利用者間の電気通信を前提としており、DPF事業にネットワーク・レイヤーの業規制がかかるかも問題となる。電気通信事業法は、他人の通信の媒介に着目した業規制をその中核としている(3.1.)が、令和4年の法改正により、他人の通信を媒介するわけではなく、単に「電気通信設備を他人の通信の用に供する」のみのDPF事業であっても、一定の場合には同法の適用がありうることとなった(3.2.)。この電気通信事業法の適用対象の拡大は、同時に行われた同法の規律内容の多様化を踏まえて評価する必要がある(3.3.)。
3.1.通信の媒介の規制電気通信事業法は、電気通信
DPF事業は、その性質上、少なくとも「電気通信
ところが近年、上記の3号事業者の定義に当たる者であっても、電気通信事業法の諸規定が適用される場面が拡大してきている38。同法の令和4年改正は、「検索情報電気通信役務39」(いわゆる検索エンジン)または「媒介相当電気通信役務40」(いわゆるSNS)を提供する電気通信事業者のうち総務大臣が指定するものを、3号事業者から除外した(同164条1項3号ロ、ハ)41。その結果、これらの事業者は、検閲の禁止(3条)や通信の秘密の保護(4条)のみならず、届出制(16条)や、非常事態時の電気通信業務の一時停止・通信の秘密の漏えい等の事故の報告(28条)、通信の秘密の確保に支障があるとき・不当な差別的取り扱いを行っているとき等の業務改善命令(29条)等の規定の適用を受けることとなった。加えて、令和2年改正により、外国法人に対して国内代表者等の指定が義務付けられ(同法16条1項2号)、また法令違反等の公表の根拠規定が置かれ(同法167条の2)、外国事業者に対する執行の実効性が高められている42。
3.3.規律内容の多様化ところで、電気通信事業法が通信の媒介を行う事業者を主たる対象としてきたのは、通信の媒介というサービスのネットワーク拘束性に着目したものであった43。具体的には、他人と他人との間の通信の媒介を行うサービスには、利用者から見て、「通信の相手があるため、自分だけで勝手に離脱することが難しい(通信相手の拘束性)」という特徴と、「別のネットワークに移行する時には、ハードウェアやソフトウェアを手直しするための余分な投資を強いられる(設備等の拘束性)」という特徴があり、それゆえに利用者が当該サービスからの離脱が困難になるために、規制の必要性が高い。これに対して、通信の媒介を行わず、自己と他人の間の通信を前提とするに留まる電気通信事業者(3号事業者)44は、その提供するサービスにネットワーク拘束性がないために、規制の必要性に乏しい45。DPF事業者が提供しているサービスのスイッチングコストの高さ46に着目すれば、DPF事業者へのネットワーク・レイヤーの業規制の拡張(3.2.)は、この種の説明の延長線上で捉えられる部分もあろう47。
しかしながら、従来の電気通信事業法の規制は、電気通信
DPF事業は、プラットフォーム・レイヤーをその主たる活動領域とするものであるが、以上見た通り、一方ではコンテンツ・レイヤーの業規制の延長として、他方ではネットワーク・レイヤーの業規制の延長として、捕捉されることがある。具体的には、コンテンツ・レイヤーの業規制はDPF事業者による取引の媒介に、ネットワーク・レイヤーの業規制はDPF事業者による通信の媒介に注目して、それぞれDPF事業にも及びうる。裏面から言えば、こうした他レイヤーの規制ではとらえきれない部分にこそ、プラットフォーム・レイヤーの業規制を観念する意義があり得る。以下では、そうしたプラットフォーム・レイヤーの業規制の意義について暫定的な整理を施したうえで(4.1.)、DPF事業の規制の分析を行う(4.2.)。
4.1 プラットフォーム・レイヤーの業規制の意義プラットフォーム・レイヤーの業規制の意義は、一方でコンテンツ・レイヤーの業規制と接する領域において、利用者のマッチングに着目した規制という点に見いだされ(4.1.1.)、他方で、ネットワーク・レイヤーの業規制と接する領域において、利用者間の情報流通の媒介の規制という点に見いだされる(4.1.2.)。
4.1.1.利用者のマッチングーーコンテンツ・レイヤーとの接点コンテンツ・レイヤーの業規制は、取引の媒介に着目してなされ、そのことの意味は、民事法上の仲立人のルールの補完という点に見いだされた(2.3.)。他方で、DPF事業者が利用者間の取引の媒介を行わないとしても、利用者のマッチングによって定型的な負の外部性が生じるのであれば、民事法上の仲立人のルールとは切り離した形で、何らかの行政規制をかける必要があるのではないか52。コンテンツ・レイヤーとは別にプラットフォーム・レイヤーの業規制を観念する必要性は、まずはこの点に見いだされよう。
このような観点からは、既存の業規制のうち、特定の「市場」の開設者ないし設置者を規制するものが注目に値する。具体的には、①中央卸売市場および地方卸売市場についての市場開設者に関する規制(許可制。卸売市場法2条3項、4項、8条以下、55条以下)、②金融商品市場について金融商品取引所に関する規制(登録制。金融商品取引法2条16項、80条以下)、③(先物)商品市場について商品取引所に関する規制(許可制。商品先物取引法9条、78条)、④古物市場についての古物市場主に関する規制(許可制。古物営業法2条2項2号、同条4項、3条以下)である。これらの「市場」の開設者ないし設置者は、いずれも当該「市場」における個々の取引を媒介するわけではなく、コンテンツ・レイヤーの規制はかからない53。これらの規制は、当該「市場」における利用者のマッチングという、当該事業のプラットフォーム・レイヤーにおける機能に鑑みたものと位置付けられる54。
こうした「市場」の開設者ないし設置者の規制は、「市場」の利用者の保護55という点では、コンテンツ・レイヤーの規制の目的と重なるが、①②③取引集中による商品の流通の円滑化・効率的な価格形成56や、④盗品等の流通の阻止57など、コンテンツ・レイヤーの規制では視野に入らない目的をも有する。敷衍すれば、コンテンツ・レイヤーが、あくまでコンテンツを取引する当事者の保護に主眼を置くのに対して、プラットフォーム・レイヤーは、それも視野に入れつつも、むしろ、当該「市場」の機能保全や秩序維持を通じて、何らかの公益の達成を目指すものという点に特徴があるといえる。
4.1.2.利用者間の情報流通の媒介――ネットワーク・レイヤーとの接点ネットワーク・レイヤーの業規制は、通信の媒介というサービスのネットワーク拘束性ないしはスイッチングコストの高さに着目してなされてきたが、令和4年電気通信事業法改正による適用対象の拡張からは、それにとどまらない規制の趣旨が示唆されていた(3.3.)。むしろ、令和4年電気通信事業法改正が、通信の媒介を行わない電気通信事業から、規制の対象とすべき「検索情報電気通信役務」および「媒介相当電気通信役務」を括りだした理由は、端的にそれらの役務を提供するDPF事業の役割ないし特徴に求められるようにも見受けられる。すなわち、「検索情報電気通信役務」については、それが「インターネット全体に影響を及ぼし、社会経済的影響が非常に大きく、様々な電気通信サービスにアクセスするための基盤的な役割」を担う点、「媒介相当電気通信役務」については、「不特定多数の者がコミュニケーション等を行うプラットフォームを提供する
ところで、デジタル空間における不特定多数の者のコミュニケーションの場は、不特定の者によって受信される通信を提供するコンテンツプロバイダのサービスとして提供されるものであり、プロバイダ責任制限法62が「特定電気通信役務提供者」(2条4号)という形でこれらの事業者を捕捉してきた。しかし同法は、プロバイダの損害賠償責任の制限(同3条・4条)と、プロバイダに対する発信者情報の開示請求の要件効果等(同5条ないし7条)を規定することで、あくまで情報の流通に係る被害者・プロバイダ・発信者それぞれの間の民事法上の法関係を整序するものであった。「市場」の規制(4.1.1.)とは異なり、この領域におけるプラットフォーム・レイヤーの業規制の展開は、比較的近時のものである(4.2.3.)。
4.2.DPF事業の規制以下では、DPFの業規制と目される立法に即して、プラットフォーム・レイヤーの業規制の現状を整理する。具体的には、出会い系サイト規制法(4.2.1.)、特定DPF法・取引DPF法・スマホソフトウェア競争促進法(4.2.2.)、情報流通プラットフォーム対処法(4.2.3.)を取り上げる。
4.2.1.出会い系サイト規制法DPF事業に対する行政規制の先駆けは、2003年の出会い系サイト規制法によるインターネット異性紹介事業の規制である63。同法は、インターネット異性紹介事業を、「異性交際希望者64の求めに応じ、①その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、②当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信65を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう」と定義している(2条2号)。ここでは、②利用者同士が「相互に連絡」を取り合うことが「できるようにする役務」を提供することに着目して規制が導入されている。同法は、いわゆる出会い系サイトが児童買春の温床となっているとの認識のもと66、「インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、もって児童の健全な育成に資することを目的とする」(1条)。児童はインターネット異性紹介事業を利用することが想定されておらず、犯罪被害者となり得る児童の保護は利用者の保護とは異なる目的であって、本法の規制をコンテンツ・レイヤーの業規制として捉えることはできない67。むしろ同法は、利用者の保護とは異なる公益の達成を目的として、プラットフォームにおける利用者のマッチングの局面に注目し、プラットフォーム・レイヤーの業規制をかけたものと目される(4.1.1.)。
なお、インターネット異性紹介事業は、②利用者同士が相互に連絡を取り合えるようにするという要素を満たすことで、他人間の通信の媒介を行っているものと評価され、もともとネットワーク・レイヤーの業規制にも服してきた(3.1.)。他方で、①異性交際に関する情報を不特定多数者に伝達するという要素にも、同法による規制の根拠が見いだされる68。ここには、不特定多数の者がコミュニケーション等を行う情報流通の場を捉えるという意味で、ネットワーク・レイヤーと接するプラットフォーム・レイヤーの業規制の先駆けを見出すこともできるように思われる(4.1.2.)。
4.2.2.特定DPF法・取引DPF法・スマホソフトウェア競争促進法2020年に制定された特定DPF法、および2021年に制定された取引DPF法は、まさにDPF事業に行政規制をかけた法律である。特定DPF法は、「デジタルプラットフォーム」として、①「多数の者が利用することを予定して電子計算機を用いた情報処理により構築した場」であり、②「当該場において商品、役務又は権利……を提供しようとする者の当該商品等に係る情報を表示することを常態とするもの」を、③「多数の者にインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて提供する役務」のうち、④利用者間の一定の関係を利用したものを捕捉している(2条1項)。取引DPF法上の「デジタルプラットフォーム」もこれと同義である(2条1項柱書)。これらの法律が規制の対象とした、特定デジタルプラットフォーム(特定DPF法2条6項)69ないし取引デジタルプラットフォーム(取引DPF法2条2項)は、上記の「プラットフォーム」の定義からも明らかなとおり、利用者間の個々の取引を媒介する者であることを要しないため、コンテンツ・レイヤーにおける業規制を受けるとは限らない。他方で、これらのDPFは、商品等の提供者と一般利用者とをマッチングする機能を果たしており、デジタル空間における利用者のマッチングの機能(4.1.1.)に注目して、プラットフォーム・レイヤーの業規制を導入したものと位置付けられる。
先に見た「市場」の規制(4.1.1.)と比較すると、ここでは、DPF事業者が提供する「市場」ないし「場」の機能保全や秩序維持を通じた公益の達成というよりは、DPFの利用者の保護に重点があるように思われる。特定DPF法ないし取引DPF法の規制は、DPFが多面市場を成立させ、間接的ネットワーク効果を発揮する点に着目しており70、そこではDPF事業者と商品等提供利用者、あるいはDPF事業者と一般利用者ないし消費者との間に、情報量や交渉力に構造的な差が生まれることが問題視されている。それに対応すべく、特定DPF法は商品等提供利用者の利益の保護を、取引DPF法は一般利用者ないし消費者の利益の保護を目的として、前者は主として競争法を、後者は主として消費者法を補完する規制をかけている71。
なお、特定DPF法は、(特定)DPFの規制それ自体というよりは、(特定)DPF提供者との対話を通じた問題発見のプロセスを制度化したといえる点に特徴がある72。2024年のスマホソフトウェア競争促進法により、アプリストアの提供事業者は、同法の特定ソフトウェア事業者の指定を受けうることとなったため、アプリストアは特定デジタルプラットフォーム提供者の指定の対象となる「事業の区分」(特定DPF法4条1項)から除外されることとなった73が、特定DPF法に基づくプロセスの中で発見されたプラットフォーム・レイヤーの問題に、スマホソフトウェア競争促進法が業規制をかけることで対応したという関係を見て取ることができる。
4.2.3.情報流通プラットフォーム対処法2024年に成立した情報流通プラットフォーム対処法も、DPF事業に対する行政規制を導入した法律である。先に見た通り、同法の前身であるプロバイダ責任制限法は、プロバイダに行政規制をかけるものではなかった(4.1.2.)が、2024年の同法改正は、総務大臣により指定される「大規模特定電気通信役務提供者」74に、侵害情報送信防止措置の実施手続の迅速化や実施状況の透明化に係る一定の義務を課する(20条以下)ことで、DPF事業に対する業規制を導入したといえる75。同改正に伴い法律の名称が情報流通プラットフォーム対処法に変更されたことは、こうした同法の性格の変化を示したものと言えよう76。
情報流通プラットフォーム対処法は、従来のネットワーク・レイヤーの業規制が着目していた通信の媒介(3.1.)とは異なり、不特定の者による受信を目的とする通信(特定電気通信)に着目して、情報流通の媒介を規制している。その趣旨は、不特定多数の者がコミュニケーション等を行う場で流通する情報による権利侵害への対処にあり77、同法はDPF事業者の一種の原因者責任を具体化したものと位置付けることができる78。これは、DPFによる情報流通の媒介という局面に着目した、プラットフォーム・レイヤーの業規制の現れの一つであると理解できる(4.1.2.)。
本稿では、DPF事業に関わる業規制のレイヤー構造を可視化することで、DPF事業の行政規制の現状を整理しようと試みた。しかしながら、各レイヤーの業規制の目的・内容に関する分析はごく表層的なものであり、以上の整理は問題発見的かつ暫定的なものと言わざるを得ない。また、本稿が必ずしも明瞭に捉えられなかった問題として、広告プラットフォーム79、決済プラットフォーム80、仕事仲介プラットフォーム81、イノベーションプラットフォーム82、データ共有型プラットフォーム83などがあるが、詳細な分析は他日を期したい。さらに、近時の法学においてDPF事業の規制が大きな問題として認識されているのは、DPF事業のエコシステムを前提とした規制モデルの変革の必要性が指摘されているからであり84、本稿もその問題意識を共有するところであるが、この点の検討も今後の課題とせざるを得ない。
※ 本稿の執筆に当たり,JSPS科研費JP22H00041,JP23H00758,JP25K04749およびJP25K21889並びに令和5年度東京大学卓越研究員(推薦型)の助成を受けた。
1 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科准教授。
2 近時のまとまった研究として、千葉編(2023②)。
3 近時のまとまった研究として、石塚編(2024)、土田編(2024)、根岸=泉水=和久井編(2023)。
4 たとえば、山本龍彦編代(2025)所収の諸論稿。
5 巽(2025)。本稿の内容には、同論文の内容を詳細化し、アップデートした部分が含まれる。
6 業法という言葉について明確に共有された定義は存在しないが、例えば「特定の産業部門を対象として経済的・社会的な規制を行う法令」を意味するものとして用いられる(中田=鹿野編(2026)45頁註1〔中川丈久〕)。
7 独占禁止法2条1項、景品表示法2条1項、消費者安全法2条2項は、規制の対象とする「事業者」を「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」と定義しており、特定の産業分野に属する事業を営む者に限定していない。そのほか、個人情報保護法は、規制の対象とする「個人情報取扱事業者」を「個人情報データベース等を事業の用に供している者」と定義し(同2条5項)、特定商取引法は、通信販売、特定継続的役務提供といった、一定の取引の方法を用いる、ないしは一定の内容を伴う取引を行う販売業者または役務提供事業者を規制している(同3条以下、41条以下)が、そこで想定されている「事業」はいずれも特定の産業分野に属するものに限定されていない。
8 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号)。
9 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)。
10 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(令和2年法律第38号)。
11 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号)。
12 電気通信事業法の一部を改正する法律(令和4年法律第70号)。
13 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第25号)。
14 スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(令和6年法律第58号)。
15 なお、2024年改正後の消費税法15条の2は、DPF事業者のうち国税庁長官が指定したものが利用者間の取引に関する決済を媒介した場合に、消費税の納税義務を課している(渕(2024))。これはDPF事業の規制を目的とするものではないため、本稿では取り扱わない。
16 情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境の整備の在り方に関する研究会「電気通信事業分野におけるブロードバンド競争政策の在り方(平成14年6月6日)」第1章、総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会報告書(平成19年12月6日)」24頁以下。
17 インフラ網とサービス網との区別は、論者によって表現は異なるが、これまでも観念されてきた。山本(2011)37頁、50頁註39は、「伝送網インフラストラクチャー」と「伝送サービス」を区別する。そこで参照されているドイツの公法学では、伝送網(Netz)とサービス(Diensten)(Hermes(1998)S. 330 ff.)、あるいはネットワークインフラ(Netzinfrastruktur)とネットワーク伝送サービス(Netztransportdienst)(Kühling(2004)S. 46 ff.、Kühling(2022)Rn. 4 ff.)が区別される。本稿でネットワーク・レイヤーに言及するときは、基本的にはサービス網を念頭に置いている。
18 Tatsumi(2022)pp. 85-97.
19 たとえば、現状ではオフラインのプラットフォームである③卸売市場は、一方で市場を開設するための空間ないし場や、市場参加者がそこへアクセスするための交通路、交通手段等(②)を前提とし、他方でそこで取引を行う卸売業者や仲卸業者に取引の機会を提供する(④)。これに対して、金融商品市場は、かつてオフラインのプラットフォームだったものが電気通信ないしインターネットの普及に伴いオンライン化した例として挙げられよう。そのほか、古物市場は、いまなお多くがオフラインのプラットフォームとして存在しているが、コロナ化を経てオンライン化する例も増加しているようである。
20 そのほか、特に媒介、仲介ないし斡旋に注目する規制として、職業紹介事業(者)(職業安定法4条10項、同1項参照)、金融サービス仲介業(金融サービス提供法11条1項ないし5項参照)、有料放送管理事業(者)(放送法152条1項柱書)などがある。また、古物競りあつせん業(古物営業法2条2項3号参照)は、媒介ないし斡旋のうち特に競り(オークション)の形態をとるものを対象としている。
21 齋藤(2017)108頁以下は、プラットフォーム事業の形態の中に「取引仲介(媒介)型」を観念する。
22 「媒介」とは、「他人の間に立って、両者を当事者とする法律行為の成立に尽力する事実行為」をいい、「取引の相手方となりうるものの名称を指示する等情報の提供または紹介」を行うに留まる場合は、「媒介」にあたらない(江頭(2022)235頁、236頁註1)。宅地建物取引業について、岡本=宇仁(2020)77頁以下。旅行業について、観光庁「オンライン旅行取引の表示等に関するガイドライン(平成27年6月)」5頁。
23 小澤英明「住宅宿泊仲介業の法的位置づけ」浅見=樋野編(2018)50-51頁は、「住宅宿泊仲介業者の宿泊サービスの仲介についての規制は、旅行業者の旅行業法における宿泊サービスの仲介についての規制を実質的に超えるものではな」いとする。他方で、住宅宿泊仲介業の規制内容は、旅行業のような従来型の媒介行為に着目したものというよりは、住宅宿泊仲介業がPF事業であることに着目したものとの指摘もある(藤原=殿村=伊佐次(2019)85頁)。
24 参照、minpaku「住宅宿泊仲介業者および民泊を取り扱う旅行業者のリスト」。
25 国土交通省観光庁観光産業課長「住宅宿泊事業法の施行日後における違法物件に係る予約の取扱いについて(通知)」(観観産第152号平成30年6月1日)。
26 巽(2025)45頁。現に、いわゆる海外OTAサイトの運営事業者が、宿泊施設側への料金不払いや、予約確定ミスなどの問題を生じさせていることも報道されており、行政規制の在り方を再考する必要が生じている。なお、海外OTAサイトに対する旅行業法の適用の可否も問題となる(域外適用を肯定するものとして、原田(2025)20頁)。
27 江頭(2022)241頁以下。なお、消費者は、消費者契約の締結についての媒介者の誤認・困惑行為等を理由に、消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことが可能である(消費者契約法5条)。
28 三島(2022)。仲立人の規律以外も含めた民事法の議論として、千葉恵美子「デジタル・プラットフォーム事業の展開と民事実体法からのアプローチ」千葉編(2023①)406頁以下、同「デジタル・プラットフォーム事業におけるプラットフォーム事業者の役割と責任」千葉編(2023①)462頁以下、鹿野菜穂子「デジタル市場の健全な発展とプラットフォームに関する消費者関連ルールの形成」中田=鹿野編(2024)14頁以下〔初出:2020〕、中田邦博「消費者視点からみたデジタルプラットフォーム事業者の法的責任」中田=鹿野編(2024)54頁以下(初出:2020)。
29 「委託関係にない(媒介契約が締結されていない)相手方当事者」が「仲立人に対してどのような信頼を寄せるかは、当該仲立業について、業法に基づき免許制が採られているか、登録制にとどまるか、それとも、業法による監督システムが全く存しないかによっても異なるはずであり、注意義務の中身も仲立人に寄せられる信頼の程度に応じて異なりうる」(洲崎(2009)443頁)。
30 ここで除かれている「放送法上の放送局設備供給役務に係る事業」は、電波法および放送法上の基幹放送(局)に係る規制を受けることになる。
31 電気通信設備とは、「電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備」をいい(電気通信事業法2条2号)、ここには電気通信回線設備(後掲註32)のみならず、サーバーも含まれる(呂(2025)36頁)。
32 正確には、単に「電気通信
33 ただし、3号事業者にも、検閲の禁止(3条)、通信の秘密の保護(4条)、電気通信紛争処理委員会のあっせんおよび仲裁(157条の2)等の一部の規定は適用される(同164条3項)。3号事業者が通信の秘密を犯した場合には罰則の適用もある(同179条1項第一括弧書)。また、後に見る令和4年改正により、外部送信規律違反の場合の業務改善命令も適用されることとなった(29条2項4号)。
34 「他人の通信」には、自己と他人との間の通信も含まれるため、利用者間に直接の通信がなくとも、DPF事業者と利用者間との通信が「他人の通信」に当たる。また、DPF事業者が電気通信設備を所有している必要まではなく、それを利用する権限を有することで足る(呂(2025)37頁)。
35 例として、インターネット異性紹介事業(4.2.1.)は、「異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業」をいう(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律2条2号)ため、その定義に該当する以上は、異性交際希望者同士の通信を媒介していることになり、電気通信事業者としての規制を受けることになる(参照、総務省「電気通信事業参入マニュアル〔追補版〕」(令和5年1月30日改定29頁)。
36 「他人の通信を媒介」するという要件の詳細に関しては、呂(2025)41頁以下。
37 総務省・前掲註35) 25頁、27-29頁。
38 先駆けとして、同法の平成27年改正は、「ドメイン名電気通信役務」(同164条2項1号)を提供する電気通信事業者を、3号事業者から除外した(同164条1項3号イ)。参照、多賀谷監修(2024)754頁以下。
39 「入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。)に対応して当該検索情報が記録されたウェブページのドメイン名その他の所在に関する情報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務」をいう(164条2項4号)。当該「総務省令」では、外部送信規律の対象となる電気通信役務であり、前年度における一月当たりの利用者の数の平均が一千万以上であることが定められた(電気通信事業法施行規則59条の3第4項)。
40 「その記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又はその送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力する電気通信を不特定の者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務のうち、その内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務」をいう(164条2項5号)。当該「総務省令」では、「その記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報(商品、役務又は権利に関する情報を除く。以下この号において同じ。)を記録し、又はその送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力する電気通信を不特定の者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力された情報を不特定の者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務であつて、主として不特定の利用者間の交流を目的としたもの(当該電気通信役務以外の電気通信役務に付随的に提供されるものを除く。)であること」に加えて、前年度における一月当たりの利用者の数の平均が一千万以上であることが定められた(電気通信事業法施行規則59条の3第5項)。
41 総務大臣による指定及びその解除は告示によって行うものとされている(電気通信事業法施行規則59条の2)。現在、マイクロソフト(Bing)、Google(検索、YouTube)、Lineヤフー(VOOM、知恵袋)、Meta(Facebook、Instagram)、TikTok、Xの各社が指定されている(検索情報電気通信役務及び媒介相当電気通信役務を提供する者を指定する件(総務省告示令和5年第347号))。
42 参照、田中=小林=甚田=岡邊(2020)IV-19頁以下、宍戸(2025)329頁以下。
43 参照、電気通信法制研究会(1987)5頁。
44 自己と他人の間との通信も「他人の通信」に当たることについては、前掲註34参照。典型はいわゆる計算センターである。参照、藤田=高部(2015)60頁。
45 電気通信法制研究会(1987)251-252頁。
46 曽我部=林=栗田(2025)592頁〔栗田昌裕〕。
47 多賀谷監修(2024)755頁は、DPF事業のネットワーク拘束性を規制理由の一つに挙げる。
48 藤田=高部(2015)62頁註11は、「およそ『電気通信回線設備を設置することなく電気通信役務を提供する電気通信事業』に対する規制がほとんど存在しない現在において第三号事業の定義を詳細に掘り下げることの実務的意義はあまり大きくないと言わざるを得ない」としていた。
49 同27条の5は、「内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する電気通信事業者」を、「特定利用者情報……を適正に取り扱うべき電気通信事業者として指定することができる」と定め、特定利用者情報を適正に取り扱うべき電気通信事業者を指定する件(総務省告示令和5年第416号)において、主要な検索サービスやSNSを提供する事業者が指定されている。
50 同164条3項は、3号事業者にも27条の12が適用される旨を規定しており、27条の12第1項第一括弧書きは、3号事業者のうち「内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者」に同条の規律が適用される旨を規定している。この「総務省令」では、SNS、電子掲示版、動画共有サービス、オンラインショッピングモール等(2号)、オンライン検索サービス(3号)、ニュース配信、気象情報配信、動画配信、地図等の各種情報のオンライン提供(4号)が定められている(施行規則22条の2の27。参照、総務省「外部送信規律FAQ」問1-9)。外部送信規律の詳細に関しては、呂(2025)84頁以下。
51 宍戸(2025)331-332頁は、3号事業者の範囲の見直しと特定利用者情報の規律とを関連付けてとらえる。多賀谷監修(2024)755-756頁は、「投稿内容、閲覧履歴等利用者に関する情報が広範囲に取得される」ことも、3号事業者の範囲の見直しの理由に挙げている。
52 原田大樹「規制戦略論から見たデジタルプラットフォーム取引」中田=鹿野編(2024)94頁は、これをDPF事業者の警察責任に応じた規制として捉える。
53 たとえば金融商品取引所は、「そのシステムの参加者が定型化された売買注文等をシステムの端末装置から入力すると、あらかじめ定められた一定のルールに従い取引が自動的に成立するシステムを提供している」に留まり、金融商品取引所と参加者との間には「取引の成立を目的とする一種の設備利用契約」が存在するが、金融商品取引所が上場された金融商品の取引を「媒介」するわけではない(江頭(2022)236頁註1)。
54 経済産業省=公正取引委員会=総務省「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する中間論点整理」(平成30年12月12日)5頁は、例外的に業規制に服する(デジタル・)プラットフォームとして、②金融商品取引所と①卸売市場を挙げていた。
55 ①卸売市場法1条は、「生鮮食料品等の取引の適正化」を明示的に目的に掲げている。
56 ②金融商品市場に即した説明として、山下=神田(2017)435頁。③商品取引所については、古い文献であるが、吉田(1950)11頁以下、17頁以下、田中(1938)3頁以下、28頁以下。他方で、①卸売市場については、相場情報の形成・流通コストの引き下げが当初の政策目的であったが、それが一定程度達成されたことで現在では卸売市場の縮小が生じており、新たな政策目的としてサプライチェーン・リスクへの対処が位置付けられ得るとされている(松井(2023)373頁以下)。ただし、問題が卸売市場改革のみでは解決しないことも含めて参照、松井(2024)。
57 古物営業法は、警察庁の所管法令として、「盗品等の売買の防止、速やかな発見等」を通じた「窃盗その他の犯罪の防止、及びその被害の迅速な回復」を目的としている(1条参照)。保安警察研究会(1985)83頁、93頁は、「古物商がぞう物を取り扱う蓋然性が極めて高い」という認識を前提に、古物市場においては「一時に多量の品物が取引されるところから」、古物市場主は「一面古物商の営業以上に重要な営業であると考えられる」としている。なお、古物営業法(昭和24年法律第108号)の翌年に制定された質屋営業法(昭和25年法律第158号)は、いまだ目的規定を欠くものの、やはり警察庁所管法令として、消費者保護に加えて「ぞう物の流通阻止」を目的とするものと解されている(保安警察研究会(1985)5頁)。
58 中川=関口=江口=永井=中島(2022)38頁註14。
59 呂(2025)124頁は、この種のサービスを「『場』を提供するサービス」と表現している。
60 成原(2016)349頁以下、成原慧「情報法からみたプラットフォームをめぐる法的課題」千葉編(2023②)87頁以下。
61 規制の内容としては、事業者の警察責任に対応するものとして捉えられるものもあれば(4.2.3.参照)、ユニバーサル・サービス性を担保するための公益事業規制として捉えるべきものもあるように思われる(マルチメディア・プラットフォームに即した指摘として、多賀谷一照「マルチメディアの制度的仕組み」多賀谷(1995)289頁、296頁)。
62 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号)。
63 森(2016)11頁は、同法を非マッチング型プラットフォームの業法規制として捉える。
64 異性交際を希望する者をいう(同号第二括弧書き)。異性交際とは、 面識のない異性との交際をいう(同号第一括弧書き)。
65 電気通信事業法第2条第1号に規定する電気通信をいう(同号第三括弧書き)。
66 最一小判平成26年1月16日刑集 第68巻1号1頁は、同法の立法事実として、「同事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪が多発している状況を踏まえると,それら犯罪から児童を保護するために,同事業について規制を必要とする程度は高いといえる」とする。福田=難波=渡辺=津村=村上(2009)1頁以下は、出会い系サイトの運営事業者に自主的な措置を要請するのみでは児童買春等の被害の拡大を防ぐことができなかったことも指摘している。
67 また、仮に利用者の保護を目的とした規制と捉える場合でも、異性紹介事業は、紹介された異性間の何らかの取引を前提としているわけではなく、当然ながらその媒介をするという要素を持たないため、利用者間の取引の媒介の規制(2.1.参照)として捉えることはできない。
68 警視庁「『インターネット異性紹介事業』の定義に関するガイドライン」6頁は、「顧客のプロフィールを不特定又は多数の者が閲覧できるようにしていない結婚相談サイト」は①の要素を満たさずに規制の対象とならないことを明記している。
69 ➊総合物販オンラインモール、❷アプリストア、❸メディア一体型広告デジタルプラットフォーム、❹広告仲介型デジタルプラットフォームが「特定デジタルプラットフォーム」として想定されている。具体的には、2021年4月1日に、アマゾンジャパン合同会社、楽天グループ株式会社、ヤフー株式会社(2023年10月20日にLINEヤフー株式会社に変更)が➊総合物販オンラインモールの運営事業者として、Apple Inc.及びiTunes株式会社、Google LLCが❷アプリストアの運営事業者として、「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定された。2022年10月3日には、Google LLC、Meta Platforms Inc.、ヤフー株式会社(2023年10月20日にLINEヤフー株式会社に変更)が❸メディア一体型広告デジタルプラットフォームの運営事業者として、Google LLCが❹広告仲介型デジタルプラットフォームの運営事業者として、「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定された。なお、❷アプリストアは、スマホソフトウェア競争促進法の施行に伴い、「特定デジタルプラットフォーム」から除外された(後述)。
70 先に見た両方の「プラットフォーム」の定義における④の関係とは、➊商品等の提供者の増加に伴い、当該商品等の被提供者の便益が著しく増進され、これにより被提供者が増加し、その増加に伴い提供者の便益が著しく増進され、これにより提供者が更に増加する関係(2条1号)、または、❷㋐商品等の提供者以外の利用者の増加に伴い、他の利用者の便益が著しく増進され、これにより利用者が更に増加する関係を前提に、㋑その増加に伴い商品等の提供者の便益も著しく増進され、これにより商品等の提供者も増加する関係(同2号)をいう。➊は売り手と買い手が相互に影響して増加する関係を捕捉しており、総合物販オンラインモールやアプリストアを念頭に置いている。❷は㋐SNS等の利用者の増加に応じて㋑(広告により商品等の販売を促進しやすくなる)商品等の提供者が増加するという関係を捕捉しており、広告プラットフォームを念頭に置いている。
71 曽我部=林=栗田(2025)151頁以下〔林秀弥〕、同596頁以下〔栗田昌裕〕。
72 巽・前掲48頁以下。
73 特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律第四条第一項の事業の区分及び規模を定める政令(令和3年政令第17号)1項は、もともと、2号でアプリストアを規定していたが、スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令(令和7年政令第279号)1項により、同号は削除された。
74 2025年4月30日にGoogle LLC (YouTube)、LINEヤフー株式会社(Yahoo!知恵袋、Yahoo!ファイナンス、LINEオープンチャット、LINE VOOM)、Meta Platforms, Inc.(Facebook、Instagram、Threads)、TikTok Pte. Ltd.(TikTok、TikTok Lite)、X Corp.(X)が、同5月29日に株式会社ドワンゴ(ニコニコ)が、同年5月30日に株式会社サイバーエージェント(Amebaブログ)、株式会社湘南西武ホーム(爆サイ.com)、Pinterest Europe Limited(Pinterest)が指定されている。
75 参照、木村=犬飼(2024)頁以下、曽我部=林=栗田(2025)264頁以下〔栗田昌裕〕。なお、プロバイダ責任制限法の規律は情報流通プラットフォーム対処法にも引き継がれている。参照、曽我部=林=栗田(2025)225頁以下〔栗田昌裕〕。
76 森(2024)18頁。
77 総務省情報流通行政局情報流通振興課情報流通適正化推進室(2025)3頁は、不特定の者に対して送信する形態で行われる電気通信により他人の権利を侵害する情報による被害の拡大が深刻化している理由を、加害の容易性、被害の拡大性、被害回復の困難性に求めている。
78 山本(2023)868-869頁は、「DPF上で違法な内容の情報が発信されることについて、DPF事業者は元来、原因者として民事法上および警察法上の責任を負う」としたうえで、この「原因者責任を再定位し」たものとして、「DPF事業者が社会において表現の自由を実現する可能性を拡大する一方で、権利侵害や違法行為の可能性も拡大させ、また、こうした権利侵害や違法行為を用意に除去できる立場にあることによる責任」を観念する。
79 プラットフォーム・レイヤーにおいて、広告プラットフォームは特定DPF法により捕捉されている(4.2.2.)ほか、薬機法72条の5は、同法違反の広告について、厚生労働大臣または都道府県知事から特定電気通信役務提供者に対して送信防止措置を要請できる旨を規定している。また、コンテンツ・レイヤーにおいては、特商法の広告規制がある(曽我部=林=栗田(2025)573頁以下〔栗田昌裕〕)。他方で、生成AIを用いたなりすまし広告への対応など、法的な課題はなお山積している。
80 林秀弥「決済サービス・プラットフォームと市場の多面性」千葉編(2019)321頁以下、千葉恵美子「プラットフォームビジネスという観点からみたキャッシュレス決済の取引構造」千葉編(2019)377頁以下。コンテンツ・レイヤーにおいては割賦販売法の規制が存在しているが、現状ではプラットフォーム・レイヤーにおける業規制は存在しない。いわゆる金融検閲への対応の必要性などが議論されているところである。
81 職業紹介事業の規制は、取引の媒介を規制するコンテンツ・レイヤーの業規制と理解できる(2.1.)が、募集情報等提供事業は、取引の媒介をするものではない(参照、倉重=白石編(2023)154頁〔白石紘一=宮川晃〕)ため、その規制はプラットフォーム・レイヤーの業規制と考えられる。令和4年改正後の職業安定法は、依頼を受けずに情報を収集して提供している者も募集情報等提供事業者に含めることとし(4条6項)、労働者になろうとするものに関する情報を収集して行う募集情報等提供を「特定募集情報等提供」(4条7項)として、特定募集情報等提供事業者について、届出制など、新たな規制を設けた(43条の2以下)(倉重=白石編(2023)169頁以下〔倉重公太朗〕)。
82 Cusumano/ Gawer/ Yoffie(2019)pp.18-21(クスマノ=ガワー=ヨッフィー(2020) 23-26頁)は、取引プラットフォームとイノベーションプラットフォームとを区別し、後者にOSやクラウドコンピューティングサービスなどを分類する。スマホソフトウェア競争促進法はOSも「特定ソフトウェア」の一つとして規制の対象としている(同法の全体像を含め、曽我部=林=栗田(2025)179頁以下〔林秀弥〕)。
83 藤原=殿村=伊佐次(2019)86頁。近時の動きとして、デジタル行財政改革会議「データ利活用制度の在り方に関する基本方針(2025年6月13日決定)」がある。
84 千葉恵美子「序章――本書の目的」千葉(2023②)3頁以下は、DPF事業者が、「プラットフォームの設計者」、「情報提供者」、「DPFの利用者間でのサービスを具体化する者」という複数の顔を持ち、それぞれが相互に結び付いている点に特徴を見出している。