2017 年 96 巻 5 号 p. 128-138
日本はエネルギー資源を海上輸送によって輸入している。従って,国際的な地政学構造が大きく変化している状況では,海外からのエネルギー資源の調達と資源輸送のリスクマネジメントが重要である。本研究では,カントリーリスクと,チョークポイントリスクと海難事故リスクを含む輸送リスクを考慮する。この分析では,リスク評価のために2つの数理計画モデルを構築する。前者のモデルの目的は,ポートフォリオ理論を用いたカントリーリスクの最小化である。後者のモデルの目的は,二項分布を用いた輸送リスクの最小化である。それらの入力データには,船舶動静データと海上航路ネットワークから得られた輸送実績を利用する。そして,数理計画ソルバーを利用して解を得ることで,新たな輸送コストを負担することなく,カントリーリスクと輸送リスクを低減させる輸入先と輸送方法が存在する可能性があることを示す。