日本エネルギー学会誌
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論文
木材加工における残材量の推計に基づく木材フロー図の作成
古林 敬顕住友 雄太中田 俊彦
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2017 年 96 巻 7 号 p. 206-216

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抄録

本研究は,木材の素材から最終利用までの定量性を可視化した,木材フロー図を作図することを目的とする。木材フロー図は,国内の木材利用の現状を理解するために必須であり,木質バイオマスのエネルギー利用を含めた木材利活用システムの設計の基礎となる。まず,国内の製材,合板,集成材,プレカット,チップ,パルプの各工程の製品生産量,残材の発生量及び用途を,丸太や解体材・廃材等の供給量及び各工程の歩留まりに基づいて推計する。得られた値を,各工程及び製品の統計値と比較した結果,概ね一致することが示された。推計値を可視化して,2014年の木材フロー図を作成した結果,木質バイオマスのエネルギー利用は,木材加工の残材や解体材・廃材がおもであり,燃料材が国産丸太に占める割合は10%に満たないことが明らかとなった。また,各工程の残材は合計8.1百万m3発生して,チップ加工に3.3百万m3,自家消費に1.8百万m3供給される等,約95%が利用されること示された。そのため,木質バイオマスのエネルギー利用量を増加するためには,国産丸太をエネルギー利用することが求められる。また,木材自給率が向上することを想定した将来の木材フロー図を作成した結果,丸太の輸入量はゼロとなり,国内生産量の増加に伴い残材の発生量が増加することが示された。一方,パルプ用チップの輸入量は16.0百万m3となったので,さらに木材自給率を向上するためには,国内産の木材を使用してパルプ用チップを生産することが求められる。

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© 2017 一般社団法人 日本エネルギー学会
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