本研究は,木材の素材から最終利用までの定量性を可視化した,木材フロー図を作図することを目的とする。木材フロー図は,国内の木材利用の現状を理解するために必須であり,木質バイオマスのエネルギー利用を含めた木材利活用システムの設計の基礎となる。まず,国内の製材,合板,集成材,プレカット,チップ,パルプの各工程の製品生産量,残材の発生量及び用途を,丸太や解体材・廃材等の供給量及び各工程の歩留まりに基づいて推計する。得られた値を,各工程及び製品の統計値と比較した結果,概ね一致することが示された。推計値を可視化して,2014年の木材フロー図を作成した結果,木質バイオマスのエネルギー利用は,木材加工の残材や解体材・廃材がおもであり,燃料材が国産丸太に占める割合は10%に満たないことが明らかとなった。また,各工程の残材は合計8.1百万m3発生して,チップ加工に3.3百万m3,自家消費に1.8百万m3供給される等,約95%が利用されること示された。そのため,木質バイオマスのエネルギー利用量を増加するためには,国産丸太をエネルギー利用することが求められる。また,木材自給率が向上することを想定した将来の木材フロー図を作成した結果,丸太の輸入量はゼロとなり,国内生産量の増加に伴い残材の発生量が増加することが示された。一方,パルプ用チップの輸入量は16.0百万m3となったので,さらに木材自給率を向上するためには,国内産の木材を使用してパルプ用チップを生産することが求められる。
本研究の目的は,籾殻燻炭(RHC)に含まれる可溶性シリカ量について,もみ殻燃焼炉による燃焼方法と従来法の燃焼方法の比較を行うことである。RHCは燃焼温度と時間を制御して電気炉で作製した。RHCの可溶性シリカの溶出量はモリブデン青吸光光度法によって測定した。また,未燃炭素量とシリカの結晶化を,RHC作製過程での重量変化および比表面積と細孔容積によってそれぞれ測定した。その結果,もみ殻燃焼炉を想定して900℃で3分間燃焼したRHCの可溶性シリカの溶出量は,従来法である400℃で60分間燃焼したRHCの可溶性シリカの溶出量の60%を示した。可溶性シリカの溶出メカニズムにおいて,もみ殻燃焼炉を想定した短時間燃焼では,可溶性シリカの溶出量は籾殻中のシリカを覆っている植物繊維の除去具合によって決定されるため,可溶性シリカの溶出量を増やすことができる高温燃焼が適することが明らかとなった。一方,従来法を想定した長時間燃焼では,可溶性シリカの溶出量はシリカの結晶化によって決定されるため,可溶性シリカの溶出量を増やすことができる低温燃焼が適する可能性を示した。
気泡流動層吸収器と高速流動層再生器で構成された2塔流動層式粒子循環システムをCO2捕集用カルシウムルーピング(CaL)プロセスの条件で運転した。焼成石灰石(CaO)を流動媒体とした。吸収器へは,空気吹き燃焼器からの排ガスを模擬してCO2,N2O,NO,O2,N2の混合ガスを供給した。吸収器ではCO2が焼成石灰石により捕集され,部分的に炭酸化した焼成石灰石は再生器に輸送され,再生器では空気中でCaCO3を熱分解した。CaLプロセスの吸収器は,粒子にCO2捕集活性がある場合にはN2O分解反応器としても働くことがわかった。吸収器に供給されたNOの一部分はCaO粒子により吸着除去され,吸着したNOは再生器に輸送されてそこで気相へ再度放出された。ただし,全体としてNOxは分解されなかった。CaLプロセスは,CO2を捕集するだけでなく,N2O分解と再生器供給ガスからの一部NO除去を行うことができる多機能プロセスであることがわかった。
バイオエタノールは重要な輸送燃料であるが,資源量は有限で,地域偏在している。本研究の目的は,世界のバイオエタノールの輸出・輸入地域の戦略の評価である。このため,著者らはエージェント手法を適用した世界エネルギーモデルを用いたシミュレーション分析を行い,次の結果を得た。(1)セルロースエタノールが高コストな状況で,バイオ燃料輸入地域が硬直的なバイオ燃料混合率の戦略を採用すれば,国際的なバイオエタノール価格は,生産コストが高いだけでなく,価格プレミアムが高くなるため,高価格で収束する。(2)バイオマス輸入地域がバイオエタノールの柔軟な混合率戦略を採用すれば,価格プレミアムは抑制されバイオエタノール価格は低下する。(3)もし,セルロースエタノールの生産コストが糖質エタノール並みに低下すれば,シミュレーション結果は高い混合率かつ低い価格プレミアムで収束する。このとき,バイオエタノールは主要な輸送燃料の一つとなる可能性がある。
不純物含有量が少ないSiO2担体にCoを30 wt%担持した高活性触媒について,Co前駆体の影響,Pt助触媒の効果を評価したところ,酢酸コバルトを前駆体として調製したCo/SiO2触媒の活性は高くないが,Pt助触媒を少量添加することで活性は飛躍的に向上した。Pt助触媒の添加による活性向上は,還元されにくい小粒子径Coが還元されたためと考えられる。しかし,酢酸コバルトを前駆体として調製したPt-Co/SiO2触媒の活性は著しく高いものの,C5+選択率は相対的に高くなく,C5+生産性はCo前駆体によって大きな差は見られなかった。