2018 年 97 巻 10 号 p. 284-299
国土の約7割を森林が占める我が国において木質バイオマスの賦存量は大きいが,そのエネルギー利用は進んでいない。 その背景として,木質バイオマスの生産コストが高いことや発電システムを含めたエネルギー利用の需給システムが未確立であることがあげられる。本研究では,直接燃焼型バイオマス発電,バイオマスガス化発電,化学ループ法(次世代のエネルギー変換技術の1つで炭素系燃料による金属酸化物の酸化還元反応の繰り返しにより新たな分離プロセスを経ずに二酸化炭素を分離・回収できる燃焼システム)を対象として,それぞれの発電種別のプロセスを確定した後,発電システムのエネルギー効率及び発電コストを詳細な積み上げ法により算出し,木質バイオマスの利用拡大に向けて解決すべき技術的課題(タービン効率の改善等)や条件(出力規模,燃料含水率,システム稼働率,二酸化炭素の分離・回収等)について技術シナリオとしてまとめた。その結果,木質バイオマス自体のコスト低減を施しつつ蒸気サイクルの高温高圧化によってシステム発電効率が改善し,木質バイオマス発電による発電コストが本報での目標値である25円/kWhを下回る可能性があることがわかった。また化学ループ法により分離・回収した二酸化炭素を売却することで発電コストが低減し木質バイオマスのエネルギー利用が普及・拡大する可能性を示した。