日本エネルギー学会誌
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論文
現行の気候・エネルギー政策および国別貢献による世界全体のエネルギー起源CO2排出削減と エネルギーシステムの評価
魏 啓為佐野 史典本間 隆嗣小田 潤一郎林 礼美秋元 圭吾
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2018 年 97 巻 6 号 p. 135-146

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抄録

本研究は,世界エネルギー・温暖化対策評価モデルDNE21+を用い,主要国の気候・エネルギー政策を踏まえて,現行政策と国別貢献が世界全体のエネルギー起源CO2排出削減とエネルギーシステムに与える影響を評価した。現行政策は, 2011年から2030年の世界全体の累積エネルギー起源CO2に対してベースライン比41 Gt-CO2の排出削減に貢献し,国別貢献の半分程度を達成できる。現行政策を加味した国別貢献では,主に発電部門と運輸部門において再エネの拡大と省エネが推進される。コスト効率的な排出削減の達成を狙った場合と比べると,特に発電部門の再エネ拡大対策と運輸部門のバイオ燃料導入・省エネ対策は過剰であり,気候変動緩和策の対策コストを増加させる。発電部門での二酸化炭素回収・貯留付きを含めたガス火力および原子力の拡大と,産業部門における省エネ,そして民生部門でのガス利用の拡大と電化を包括的に進める方がコスト効率的となる。エネルギー政策は必ずしも気候変動緩和を主目的とするわけではないが,持続可能な発展に向けて,国別の政策目標と世界全体の気候変動対策が整合および両立しうるようなコスト効率的な政策パッケージの立案が極めて重要となる。

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© 2018 一般社団法人 日本エネルギー学会
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