日本エネルギー学会機関誌えねるみくす
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学会賞(学術部門)
数値シミュレーションの援用による石炭・コークス・バイオマス等炭素質資源関連研究の進展
青木 秀之
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2023 年 102 巻 3 号 p. 268-273

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抄録

石炭は貴重な化石資源であり,燃料や原料としての高度利用は地球の環境保全や資源の有効利用の観点から極めて重要である。エネルギー分野では石炭ガス化複合発電技術の開発が,鉄鋼分野ではコークスの製造法の技術革新による省エネルギーや劣質な石炭種の使用拡大が進展している。これらの技術開発はわが国の産業におけるCO2排出量の低減に多大な貢献を果たしてきた。一方で,CO2排出量の低減が世界的な動きとなる中で,上記の産業においては脱石炭を推進することが喫緊の課題となっている。 石炭に代表される炭素資源は,炭素を循環する形で今後もエネルギー分野や鉄鋼分野をはじめとして,多様な産業で利用されると考えられるが,反応場が比較的高温であることや効率的なエネルギー変換を目指すほどに炭素資源の変換プロセスは複雑なものとなる。このような場の評価を行うためには,実験的な手法のみならず,数値解析的な手法を援用した現象の解明が必要とされる。熱流体解析をはじめとするシミュレーションの発展には,コンピューターの性能向上も相まって近年,めざましい発展を遂げている。しかしながら最先端のプロセスを予測するためには,新規なモデルの提案や精度の向上も必要となる。また,シミュレーションの展開においては,予測上必要となる物性値の測定も欠かすことはできない。これらの問題の解決を行いながら,従来のプロセスの高効率化により,CO2の削減を図りながら,石炭や,人類の活動に用いられる炭素資源の循環利用を目指した研究を進めている。

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