回路実装学会誌
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熱硬化型PPE樹脂積層板の高周波領域の誘電特性の安定性
新井 雄史横山 秀久木下 昌三片寄 照雄
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1995 年 10 巻 2 号 p. 113-117

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抄録

耐熱性および優れた誘電特性を有するプリント配線板材料として熱硬化型PPE樹脂S4100を開発した。S4100とガラスクロスを用いて銅張積層板を作成し特性を調べたところ, S4100積層板は2GHzにおける比誘電率が3.36, 誘電正接が0.004と良好な高周波特性を有し, かつガラス転移温度が200℃とポリイミドに次ぐ高い耐熱性を合わせ持つ材料であることがわかった。材料の絶縁信頼性の尺度の1つとしてGHz領域の誘電特性の安定性が重要であると考え, S4100積層板の誘電率, 誘電正接の温度依存性と加湿条件下での特性変化を調べ, FR-4積層板およびフッ素樹脂積層板と比較した。S4100積層板の誘電率, 誘電正接の温度依存性は小さく, 代表的な低誘電率低損失材料であるフッ素樹脂積層板以上の安定性を有していた。プレッシャークッカーによる加湿に対する誘電特性の安定性の評価では, 吸水率が0.2%とFR-4積層板の0.9%より小さいため, 誘電率, 誘電正接の変化が小さかった。この加湿条件ではFR-4積層板にはんだ耐熱試験でふくれが発生したが, S4100積層板には問題は発生しなかった。伝送損失測定により, 0.8~4GHzの周波数領域ではS4100積層板がフッ素樹脂積層板と同等の低伝送損失であることがわかった。高速デジタル回路板や高周波通信機器の基板などに有用な材料であることが確かめられた。

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© 一般社団法人エレクトロニクス実装学会
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