抄録
ガラスは透明性, 低損失, 低価格, 加工性の良さなど他の材料にはないたくさんの長所を有しているが, 元来反転対称性を有するため, 2次の非線形性は生じないと考えられてきた。しかし, 高周波スパッタにより作製したガラス薄膜光導波路にコロナポーリングを施すと, 2次の非線形光学特性が発現する。特にその透明性を生かし, より短波長化を目指す波長変換素子としての応用が期待できる。チタンサファイアレーザ (波長860nm) を基本波光源に第二高調波発生の実験を行い, 明確な青色位相整合第二高調波を観測した。ガラス中の欠陥あるいは薄膜とガラス基板の界面などに起因する直流電場Edcが導波路内に生じ, それに伴い実効的な2次の非線形性が発現するというモデルを, 実験結果をもとに提唱した。また, Coming7059ガラスを構成する成分 (SiO2, B2O3, Al2O3, BaO) の組成の影響について調べた結果, SiO2-BaO-B2O3あるいはSiO2-BaO-Al2O3の組み合わせが2次の非線形性発現およびその緩和抑制に有効に働いていることがわかった。さらに雰囲気中の温度を変化させたときのComing7059薄膜における2次の非線形光学定数 (d定数) の緩和を観測し, 活性化エネルギが0.5eVであることを求めた。