農業環境技術研究所 (茨城県つくば市) 内の複数の池沼において, 湿性緑地 (湿性の推移帯を含み水陸にまたがるオープンスペース) の範囲を定め, その植生構造とトンボの間の対応関係を検討した. 木本植生, 抽水植物, 浮葉植物, 沈水植物および開水面を植生構造の要素として, これらの要素がつくる植生構造とトンボの分布との関係を解析し, 両者の対応から類型化を行った.
その結果, 以下のようなことが明らかとなった.(1) トンボの種類数個体数は湿性緑地の要素が欠損しない植生構造で最も多かった.(2) 各要素の植被率によって, トンボの植生構造に対する選択性に変化がみられた.(3) ある特定の要素が欠けたり植被率が100%に近い湿性緑地に対して集中もしくは回避する種の存在が明らかになった.