抄録
本研究は, 平安時代から鎌倉時代にかけて成立した日本庭園の一形式である浄土庭園を対象とし, 空間構成の特徴と時代的変化の考察を目的とした。調査は,(1) 敷地内庭園構成要素のスケールの計測・分析,(2) 敷地外要素, 特に園内から視認できる山について距離・方位・仰角の定量的把握と形態分析を行った。この結果, 敷地内要素の特徴としては, 視点場から池の汀線までの距離が約20~30mであること, 池を見る水平視角が約80度以上であること等6つの特徴が明らかになった。また, 敷地外要素については, 園内から周辺の山頂への平均仰角が約8.5度であること, 時代を経るにつれて伽藍背景となる山との距離が近くなること, 伽藍後方には複数の山による視覚上の谷が見られることが多い等の特徴が明らかになった。