抄録
柳沢信鴻の『宴遊日記』に記された園内の動物の記事をもとに, 六義園における動物の様態をあきらかにし, 大名庭園の構成要素としての動物について考察した。
その結果, 庭園が動物にとって多様な生育環境を提供したこと, 昆虫からほ乳類まで種々の動物が園を訪れ, 園内に棲みついていたこと, 園は野生の動物と身近に接する場となったことが明らかになった。さらに, 園の動物は, 自然界の営みを目のあたりにさせる, 園が祝意の空間であることを示す, 超自然の意向を示す, 季節の聴覚的享受といった要素を庭園に付け加え, 庭園空間を豊かにしたことが認められた。