腸内細菌学雑誌
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総 説<特集:腸内菌叢はコントロールできるか?>
母乳中の因子および人工乳の改良がもたらす乳児腸内細菌叢への影響
堀米 綾子江原 達弥小田巻 俊孝清水 隆司
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2019 年 33 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

母乳は乳児にとっての最良の栄養源である.乳児の腸内細菌叢はビフィズス菌優勢であり,このことが児の健康に大きく貢献していると考えられている.母乳中にはさまざまな抗菌活性因子,免疫性因子,ビフィズス菌増殖因子が含まれており,これらが複合的に作用して乳児のビフィズス菌優勢な腸内細菌叢を形成するものと推測されるが,その詳細は未だ十分には解明されていない.一方,人工栄養児の腸内細菌叢は,母乳栄養児のそれと比較してビフィズス菌が少ないなどの差が認められることが古くから指摘されており,人工乳のさまざまな改良が腸内細菌叢改善の観点からも試みられてきた.本稿では,母乳中の因子による「乳児型」ビフィズス菌の増殖およびその他細菌の排除の仕組みに関する最近の知見について,主要なビフィズス菌増殖因子であるヒトミルクオリゴ糖(HMOs)の話題を中心に,われわれの研究成果も交えて紹介する.また,腸内細菌叢改善の観点からの人工乳の改良の歴史と現状,今後の可能性についても併せて概説したい.

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© 2019 (公財)日本ビフィズス菌センター
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