腸内細菌学雑誌
Online ISSN : 1349-8363
Print ISSN : 1343-0882
ISSN-L : 1343-0882
総 説
がんに対する免疫チェックポイント阻害療法と関連する腸内細菌叢
安達 圭志玉田 耕治
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 35 巻 3 号 p. 143-154

詳細
抄録

1981年以降,我が国ではがんが死亡原因の一位となっており,現在でもその上昇傾向に歯止めがかかっていない.2019年のがんによる死者は約37万4千人で,全死亡者に占める割合は 27.4%であり,これは,この年の全死亡者の約3.5 人に1人はがんで死亡した計算になる.免疫療法は,外科療法,化学療法,放射線療法に続く第4の治療法として近年急速に発展してきた.特に,治療抵抗性の一因となっているがんの免疫抑制環境を破壊することで治療効果を発揮する『免疫チェックポイント阻害療法』は,これまでにない優れた臨床効果を示す革新的治療法であり,幾つかの阻害薬は承認薬として世界各国ですでに臨床応用されている.しかし,免疫チェックポイント阻害療法にも克服されなければならない重要な課題が残されており,そのなかの一つが,臨床効果や有害事象を予測して最適な患者または治療法の選択を可能にするバイオマーカーの同定である.これまでに報告されたバイオマーカーは,分子,細胞レベルで判断されるものが主流であったが,次世代シーケンサーなどのハイスループットな遺伝子解析システムの発達とともに,患者個々のがん関連遺伝子や腸内細菌叢に着目したバイオマーカーの開発が研究されるようになった.本稿では,がんに対する免疫チェックポイント阻害療法の効果と相関しうる腸内細菌叢解析の進捗について解説する.

著者関連情報
© 2021 (公財)腸内細菌学会
次の記事
feedback
Top