腸内細菌学雑誌
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総 説
腸内細菌とTh17細胞
後藤 義幸
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2021 年 35 巻 4 号 p. 215-222

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抄録

腸管は食餌性抗原や腸内微生物など,無数の抗原に常に曝されている特殊な器官である.腸管には,極めて多くの免疫細胞が集積しているが,なかでもCD4陽性T細胞であるヘルパーT細胞の一種であるTヘルパー17(Th17)細胞が恒常的に存在することが知られている.これは,腸内細菌の一種であるセグメント細菌(segmented filamentous bacteria, SFB)のように,Th17細胞の分化・増殖を誘導する微生物が存在するためである.興味深いことに,腸内細菌によって誘導されるTh17細胞は,病原性細菌の感染防御や上皮バリアの構築に寄与し,腸管の恒常性維持に重要な役割を担っている.このため,腸管におけるTh17細胞は全身系組織において病的な炎症を誘導するTh17細胞とは異なる特徴を有すると考えられている.一方で,SFBによって誘導されるTh17細胞は,関節リウマチや多発性硬化症マウスモデルにおいて疾患の増悪に寄与することが報告されている.つまり,腸管Th17細胞は宿主の疾患発症,制御を司る重要な細胞であり,疾患治療の重要なターゲットとなり得る.今後は,腸管Th17細胞の分化誘導および制御機構の詳細を明らかにすることで,様々な疾患に対する新規治療法の開発が期待されている.

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© 2021 (公財)腸内細菌学会
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