2021 年 35 巻 4 号 p. 231-239
国内の13大学より現地ラボラトリーで飼育しているマウスの糞便を収集し,これらの糞便サンプルから抽出したDNAサンプルについて,次世代シーケンサーを用いたマウス糞便細菌叢の門レベルでの解析とほぼ同等に菌叢解析ができるとされる既報のプライマーを用いた定量PCR(qPCR)を行った.さらに,マウスを用いた食品成分の腸内細菌叢への影響評価の指標として使われている科から種レベルを標的としたqPCRを用いて菌叢解析を行った.国内の実験用マウス糞便細菌叢のqPCR結果を多変量解析に供したところ,分類階層の門および科/属レベルにおいて飼育施設ごとに異なる系統クラスターを形成した.この系統クラスター形成がマウス系統や性別・週齢等の内的要因,あるいは給水,床敷,飼料等の外的要因と相関するかをχ 2検定で調べた結果,飼料の差異で有意な相関が認められた.この結果は,国内の実験用マウスにおいても諸外国の過去の所見と同様,外的要因によって腸内細菌叢が変動することを示すものであり,翻って,経口摂取する食品成分等の機能性評価を正確に行うには,マウス細菌叢の標準化,あるいは実験動物に依らない代替法の検討が必要であることを支持するものである.