腸内細菌学雑誌
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フラクトオリゴ糖と下痢
Mohammad JUFFRIE
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2002 年 16 巻 1 号 p. 31-34

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抄録
難消化性食物繊維のフラクトオリゴ糖 (FOS) の特長として, 高コレステロール血症, 病原性細菌の過剰増殖や結腸癌の予防および粘膜免疫反応の促進作用のあることが証明されている.善玉腸内フローラの主な機能は, 有害な細菌の増殖や感染から消化管を守ることである.Bifidobacteriumは揮発性脂肪酸を産生するが, これら脂肪酸は重大な代謝エネルギーとなるだけでなく, 消化管を酸性にし, サルモネラ菌, 赤痢菌, クロストリジウム, Campilobacter jejuni, 大腸菌など有害細菌の増殖を抑制する.反対に消化管環境で善玉腸内フローラが減少すると, 潜在的な化学変化が起こり, ウェルシュ菌や大腸菌など有害細菌が増殖する.このようなバランス崩壊の臨床症状の一つが下痢である.発展途上国で下痢は未だに小児の罹病と死亡の最大原因で, 5歳未満の小児症例数が13億件と推定されている.FOSは善玉腸内フローラの食物となり, 増殖を促す消化管の効果的な「肥料」である.腸内フローラが改善すると, 便秘や下痢が解消し, 大腸内の腐敗物質産生が減少し, 高脂血症の血清脂肪が改善し, 総コレステロール, 中性脂肪, 血糖値, 血圧が低下する.本試験より, FOSを与えた下痢患児で下痢の疾病期間がプラセボ対照群より短くなることが明らかになった (4.24日に対し2.62日).またFosを摂食した小児の糞は, 摂食しなかった小児に比べてpHが有意に低かった.
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© 財団法人 日本ビフィズス菌センター
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